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艸句会報:連雀(令和元年12月4日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「靴下、ストッキング」

高点3句
ポケットの鍵も走れり十二月     束田 央枝
日向ぼつこ私の中の砂時計      横山 靖子
歩かねば歩けなくなる冬菫      春川 園子

鍋いつぱい古女房の根深汁      松成 英子
ペイペイで払ふ治療費冬うらら    向田 紀子
急ぎ書く喪中葉書や室の花      中島 節子
ポインセチア寝足りし嬰のひとりごと 加藤 弥子
枯れ切つて風の素通る蓮田かな    進藤 龍子
知らぬ間に歯周病とや冬菫      束田 央枝
冬夕焼だいだい色は神の色      松本ゆうき
戦場の廃墟のごとき蓮の骨      横山 靖子
弟逝く花石蕗の黄の眼に痛き     坪井 信子
靴下を継ぎし母恋ふ霜の夜      岡崎由美子
通院の足裏にやさし落葉踏む     春川 園子
姑御に夢で叱られ龍の玉       飯田 誠子

(清記順)

一口鑑賞日向ぼつこ私の中の砂時計」靖子さんの句。一読して「砂時計」が心の中で動き出す。もちろん「私の中の」だから、実体としての砂時計はどこにもない。作者は、冬日向の眩しさや温もりの中で砂時計をイメージしているのである。それ自体に特別な意味はないのだろう。俳句における詩とはこんなものかもしれない。上五は音数を考えれば「日向ぼこ」としたいところだが、字余りが読み手の心を誘い込む効果を生んでいる。「通院の足裏にやさし落葉踏む」園子さんの句。落葉の路を歩いての通院。病を抱える作者にとっては、落葉を踏む音や感触が心に響いて励まされる気持ちになったのだろう。高点句に入った「歩かねば歩けなくなる冬菫」では、病に負けまいとする園子さんの強い気持ちが表れている。(潔)

艸句会報:すみだ(令和元年11月27日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「鍋」

高点3句
茅門の屋根を彩る散もみじ       高橋 郁子
おでん屋台今日の疲れの大きな背    岡崎由美子
雪吊りに自ずと背筋伸ばしけり     岡戸 良一

風評など気にしませんと鮟鱇鍋     岡戸 良一
時雨るるや宮の土俵の徳俵       岡崎由美子
悪相の魚も加へて寄せ鍋に       工藤 綾子
河豚鍋や父の小言もうわの空      大浦 弘子
山時雨祖谷の吊橋傘すぼめ       貝塚 光子
枇杷の花ひとり暮しも身につきて    福岡 弘子
鍋焼うどんの鍋の年季も味の内     高橋 郁子
底冷えの軒行灯や妻籠宿        桑原さかえ
どこまでも健やかなひと石蕗の花    松本ゆうき

(清記順)

一口鑑賞おでん屋台今日の疲れの大きな背」由美子さんの句。おでんが美味しい季節になった。夕暮れどき、ふと通りかかった街角の屋台にはもう明かりが灯り、おでんから湯気が立ち込めている。風除けの透明なビニールシートはまだ半分ほど開き、客の後ろ姿もよく見える。作者は一人の客の「大きな背」に「今日の疲れ」を感じ取ったのだ。日常の中のよく目にする一コマを切り取った一句。「鍋焼うどんの鍋の年季も味の内」郁子さんの句。寒くなると必ず食べたくなるものの一つに鍋焼うどんがある。ぐつぐつ煮えた土鍋に大きめに切ったネギや椎茸、蒲鉾などとともに、生卵が落としてある。うどんは熱々。フーフー言いながら食べれば体の芯から温まる。作者は、そんな鍋焼うどんの使い込まれた土鍋に着目したのである。タレの焦げ跡がしみ込み、見た目にも風情がある。まさに「味の内」だ。(潔)

艸句会報:東陽(令和元年11月23日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「一葉忌」「手」

高点3句
針山にむかし黒髪一葉忌       野村えつ子
AIの世に追ひつけず大根切る     堤 やすこ
ひとつづつ山暮れてゆく木守柿    野村えつ子

物産展に干薇や一茶の忌       貝塚 光子
店番の小巾刺しをる一葉忌      飯田 誠子
一人では漕げぬシーソー息白し    中川 照子
句会へと急ぐしぐれの一葉忌     堤 やすこ
灯の消えてよりのやすらぎ菊人形   野村えつ子
冬銀河星のガイドのペンライト    岡崎由美子
秩父嶺の山容変はり落葉焚く     向田 紀子
菰巻や明日を信じて頑張るか     斎田 文子
革張りのメニュー帳古り散紅葉    長澤 充子
軍扇を手に山頂の冬将軍       岡戸 良一
校正のあの手この手や一葉忌     山本  潔
大榾のつつかれ元気とり戻す     安住 正子
釣書は手がき三つ折り冬うらら    羽生 隣安
書くほどのことあるやなし日記買ふ  松本ゆうき
AIの喋る勤労感謝の日        新井 洋子
(清記順)

一口鑑賞針山にむかし黒髪一葉忌」〜えつ子さんの句。「針山」は「針刺し」のこと。「針立て」「針坊」とも言う。手芸の縫針を刺しておくための台で、綿を詰めて作る。かつては針が錆びるのを防ぐため、髪の毛やゴマなど油分のあるものを詰めたという。中七の「むかし黒髪」はまさにそのことを言っている。素朴な日用品が「一葉忌」と響き合っている。この句は女性陣に圧倒的な共感を呼んだ。「一人では漕げぬシーソー息白し」〜照子さんの句。描かれているのはシーソーと白い息だけだが、自ずと公園や校庭の遊具の景が思い浮かぶ。遊び相手のいない子どもは一人でシーソーの前に佇んでいる。そんな子どものそこはかとない寂しさと、それを見つめる作者の優しい眼差しが感じられる一句。ひょっとすると、子どもの頃の作者自身かもしれない。(潔)

艸句会報:若草(令和元年11月9日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「立冬、冬に入る」、席題「豆」

高点3句
伝言を預かるやうに冬に入る     羽生 隣安
石榴裂けて明日への不安なくはなし  加藤 弥子
冬浅し耳朶に口笛ほどの風      坪井 信子

身の丈の幸を諾ひ納豆汁       安住 正子
千姫の眠る御廟や初紅葉       石田 政江
短日の地下街点す赤提灯       岡戸 良一
薄紅葉歩く速さの豆電車       新井 洋子
パンに塗るバターの固き今朝の冬   市原 久義
公園の寂しきところ石蕗の花     羽生 隣安
冬に入るアンモナイトと鮫の骨    山本  潔
この町の人にも慣れて烏瓜      坪井 信子
闇鍋に我が身の相も煮ゆるかな    飯田 誠子
落ちてより増す大きさの一葉かな   針谷 栄子
蓑虫や捨てきし夢の二つ三つ     加藤 弥子
仲直りすることもなく冬に入る    沢渡  梢
団栗や天文学者のポケットに     松本ゆうき

(清記順)

一口鑑賞伝言を預かるやうに冬に入る」〜隣安さんの句。暦の上では1年の中で最も厳しい季節の入口に当たるのが立冬だ。「冬に入る」「今朝の冬」などとも言う。東京は朝晩冷え込むようになったが、日中はさほどでもない。とはいえ、立冬と言われれば、そろそろ寒さへの準備をしなければと思う。「伝言を預かるやうに」とはまさにこんな感覚だろうか。寒さへ向かう人間心理を巧みに捉えた一句。「パンに塗るバターの固き今朝の冬」〜久義さんの句も立冬を迎えた感覚を上手く詠んでいる。パンにバターを塗るのは立冬の朝に限ったことではない。しかし立春、立夏、立秋とは異なり、冬の到来には緊張感が伴う。それが「パンに塗るバターの固き」なのである。(潔)

艸句会報:連雀(令和元年11月6日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「もつ煮」

高点3句
五十年添ひて夜寒のもつ煮込み    松成 英子
鐘一つ撞きて鎮まる伊予の秋     松本ゆうき
遊べとや墓石に飴と木の実独楽    岡崎由美子

山茶花よ母の守りし庭に咲け     松本ゆうき
白き花ばかり集めて秋の庭      横山 靖子
冬隣る七味きかせてもつ煮かな    中島 節子
凩の浅草六区もつ煮込み       岡崎由美子
茶の花や列の乱れぬ修行僧      春川 園子
夫を呼ぶ吾が声ときに鵙に似て    坪井 信子
ワイン抜く音の弾けて室の花     向田 紀子
カーブスへ老いてますます日短し   束田 央枝
色かえぬ松に日の差す即位礼     松成 英子
青あをと生ふ冬草の力欲し      進藤 龍子
花蓼やテラスに暇な椅子ひとつ    加藤 弥子
どの松も菰巻をして眠さうな     山本  潔

(清記順)

一口鑑賞「鐘一つ撞きて鎮まる伊予の秋」〜ゆうきさんの句。伊予は今の愛媛県。作者の故郷は宇和島。この句はお母様の一周忌で里帰りをした際に詠まれた。自分で撞いた鐘の音をじっと聴きながら、深まりゆく秋を感じているのである。旅吟としての味わいもあるが、それ以上に「鎮まる」という措辞に作者の心境が投影されているのではないか。母親との死別から1年。少しずつ冷静に受け入れられるようになった心持を感じさせる一句。「花蓼やテラスに暇な椅子ひとつ」〜弥子さんの句。テラスにぽつんと置かれた椅子が一脚。それを「暇な椅子」と擬人化したところに俳味がある。この句も自分自身を投影している。庭に咲いている蓼はタデ科の一年草。秋に咲くのは犬蓼(赤のまま)、花蓼、桜蓼など。穂いっぱいに淡紅や濃紅紫の粒のような花をつける。(潔)

艸句会報:東陽(令和元年10月26日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「木の実」「源」

高点2句
電線はみな自由席小鳥来る      安住 正子
木の実降る余生は日付なき旅路    羽生 隣安

ちちろ鳴く巨大草鞋の仁王門     長澤 充子
源流は多摩の奥とや柿熟るる     安住 正子
「光秀」の謎そのままに花桔梗    中川 照子
橋朽ちて色なき風の渡るのみ     小泉 裕子
手酌にも順序の在りてかまどうま   羽生 隣安
猫脚の椅子のサロンや秋深し     新井 洋子
撫牛の鈴新しく七五三        堤 やすこ
「母さん」と声にしてみる秋の雲   斎田 文子
井月の口ぐせ「千両」蕎麦の花    松本ゆうき
「ボレロ」聴きし心醒めゐる夜長かな 向田 紀子
大川を鈍色に変へ台風過       飯田 誠子
能登瓦月の名残を映しけり      岡戸 良一
子ひとりの回転木馬ねこじやらし   山本  潔

(清記順)

一口鑑賞電線はみな自由席小鳥来る」〜正子さんの句。圧倒的な人気を集めた。「電線に止まる鳥たちはみんな平等だよね」という感覚を「自由席」と表現したところにこの句の眼目があるのは明らかだ。鳥のことを言いながら、人間だって平等だという思いも込めているのではないか。「小鳥来る」は秋の季語で、鶫(つぐみ)、鶸(ひわ)、連雀(れんじゃく)、鶲(ひたき)などの小型の渡り鳥のこと。雀や鴉が電線に止まっている姿は日常的によく目にするが、渡り鳥を見分けるのはなかなか難しい。何でもよく見ている作者ならではの一句。「『ボレロ』聴きし心醒めゐる夜長かな」〜紀子さんの句。「ボレロ」は1928年にフランスの作曲家、モーリス・ラヴェルがバレエ曲として作曲した。一定のリズムを保ちながら、2種類のメロディーが繰り返されていく。この句は、ボレロの生演奏を聴いた日の夜、いつまでも頭の中でメロディーが鳴り止まず、心が覚醒していく感覚を端的に詠んだ。(潔)

艸句会報:すみだ(令和元年10月23日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題 そぞろ寒

高点3句
秋出水詩歌も虚し千曲川      高橋 郁子
母いつか子の名を忘れそぞろ寒   工藤 綾子
茅葺や京の美山の木守柿      岡戸 良一

家中の施錠確かめそぞろ寒     長澤 充子
たから箱のどんぐりにある物語   岡崎由美子
秋の虹昭和のおかつぱ白髪に    工藤 綾子
句に夢中気づけば雨やそぞろ寒   大浦 弘子
即位礼の雨の皇居や新松子     高橋 郁子
大橋を消し海峡の霧笛鳴く     岡戸 良一
湯屋の戸に「わ」の札下がる冬隣  貝塚 光子
紅葉狩り歩き疲れて寄る足湯    桑原さかえ
見守られ歩む百歳金木犀      福岡 弘子

(清記順)

一口鑑賞秋出水詩歌も虚し千曲川」〜郁子さんの句。先の台風19号は関東甲信や東北に甚大な被害をもたらした。50を超える河川が氾濫した中で、長野県を流れる千曲川も例外ではなかった。作者にとっては思い出のある川なのだろう。この句は中七の「詩歌も虚し」に率直な気持ちが表れている。島崎藤村の「千曲川のスケッチ」をはじめ多くの文学作品に登場するし、五木ひろしの「千曲川」では旅情が歌い込まれている。ところで、芭蕉は『更科紀行』で木曽路から信州に入ったが、なぜか千曲川の句を一句も詠んでいないという。「即位礼の雨の皇居や新松子」〜これも郁子さんの句。天皇陛下の即位の礼を題材に詠んだ、いわゆる時事俳句だが、「雨の皇居」と端的に言い止めたところがうまいと思う。(潔)

艸句会報:若草(令和元年10月14日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「榠樝の実」、席題「体」

高点5句
その中に兜太に似たる榠樝の実   安住 正子
台風裡カレーに落とす生卵     山本  潔
閂のすとんと秋になりにけり    加藤 弥子
不屈なる子規の横顔榠樝の実    市原 久義
消費税八やら十やら秋刀魚焼く   針谷 栄子

児がくれし青き蜜柑に掌の温み   加藤 弥子
長き夜の甘みの欲しき体かな    山本  潔
林道の風のことづて秋の声     岡戸 良一
ごつごつと光の触るる榠樝の実   坪井 信子
紅白のされど寂しき彼岸花     市原 久義
体育の日団地の底の運動場     安住 正子
父母の守りし土蔵榠樝の実     松本ゆうき
秋高し部活帰りのコロッケパン   沢渡  梢
穭田の辻に双体道祖神       新井 洋子
悩むとき悩まざるとき草の花    石田 政江
師の在せし初学の道の青くわりん  針谷 栄子

(清記順)

一口鑑賞その中に兜太に似たる榠樝の実」〜正子さんの句。昨年2月に他界した金子兜太の遺句集『百年』(朔出版)がこのほど刊行された。その記念イベントが兜太の故郷、秩父でも行われ、作者も参加してきた。この句は、兜太が好きだったという榠樝の木を見てきた実感から発想した。榠樝の実のごつごつして肉厚の印象を「兜太に似たる」と見て取った。<友ら亡し青く大きく榠樝の実><老年のわれに賑やか花梨の実>はいずれも『百年』から引いた。「ごつごつと光の触るる榠樝の実」〜信子さんの句。以前、東京・国分寺市の殿ヶ谷戸庭園で見た榠樝を思い出して詠んだという。もはやこの木はないそうだが、見事に写生句として成立している。記憶にしっかり残るまで榠樝の実をよく見たからだろう。中七の「光」に詩情が溢れている。写生の大切さを教えてくれる一句。(潔)

艸句会報:連雀(令和元年10月2日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「煎餅」

高点2句
秋晴の明石海峡蛸煎餅       岡崎由美子
秋日和茶と煎餅と小津映画     松本ゆうき

広口壜の中の煎餅秋の色      進藤 龍子
あざやかに雨降つてをり蛇苺    加藤 弥子
秋灯や人恋ふときに読む句集    岡崎由美子
ぬれ煎の食感が好き小鳥来る    山音(やまね)
川底の石の翳濃き寒露かな     束田 央枝
回転ドアより秋光へ退院す     中島 節子
四畳半の煎餅布団蚯蚓鳴く     松本ゆうき
なまぬるき秋暑の枕うらがへす   坪井 信子
死ぬといふ最後の仕事むかご飯   松成 英子

(清記順)

一口鑑賞秋晴の明石海峡蛸煎餅」〜由美子さんの句。兼題「煎餅」の中で人気を得た一句。「秋晴の明石海峡」という心地良い大きな景を提示した上で、お土産としても重宝される「蛸煎餅」を持ってきたところが洒落ている。ちなみに、淡路市の「たこせんべいの里」には40種類もの蛸煎餅が売られているという。「広口壜の中の煎餅秋の色」〜龍子さんの句。「広口壜」というだけで懐かしい感じがする。子供の頃に見た駄菓子屋や煎餅屋が目に浮かぶからだろうか。外からも見える店内には陽光が差しており、広口壜の中の煎餅もよく見える。作者はそこに秋の気配を感じているのである。(潔)

艸句会報:東陽(令和元年9月28日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「秋刀魚」「棚」

高点4句
虎猫があくびして去る曼珠沙華   山本  潔
少女らのちぢめる言葉笑ひ茸    堤 やすこ
無宿猫釣瓶落しの石段に      新井 洋子
鱗雲谷中猫町坂の上        貝塚 光子

高級魚の棚に新入り大秋刀魚    貝塚 光子
城跡は風の音のみ新松子      斎田 文子
人間が地球をこわす秋刀魚焼く   堤 やすこ
採り残す観光園の葡萄棚      安住 正子
幾何学の好きな神さまいぼむしり  松本ゆうき
邯鄲やとほき戦の語り部に     浅野 照子
夜半の秋問へば無言という返事   新井 洋子
手わたしの白桃赤子抱くやうに   飯田 誠子
月曜日の教会の扉や昼の虫     岡崎由美子
秩父路の樹々に親しき山の霧    山本  潔
榠樝の実兜太の撫でし木に触れて  小泉 裕子
若鹿の一瞬ひるむ細き四肢     長澤 充子
切れ味の良き秋刀魚選る魚の棚   岡戸 良一

(清記順)

一口鑑賞無宿猫釣瓶落しの石段に」〜洋子さんの句。「無宿猫」と言われると、ただの野良猫ではなく、人間で言えば「風来坊」のような、他所からやってきた、ちょっと粋な存在に思えてくるから不思議だ。そんな猫が陣取っている石段にも秋の夕暮は早い。「無宿猫」にもやがて冬がやってくる。「鱗雲谷中猫町坂の上」〜光子さんも猫好きならではの一句。似たような句はたくさんありそうだが…。「人間が地球をこわす秋刀魚焼く」〜やすこさんの句。今年は秋刀魚漁の不漁が深刻だという。北海道近海の水温が平年より高く、秋刀魚が寄り付かないらしい。これも地球温暖化の影響だろうか。この句は上五〜中七の断定と下五の「秋刀魚焼く」が響き合って人類への警鐘を鳴らしている。(潔)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。師系:舘岡沙緻、岸風三樓、富安風生。
『艸』は2019年夏季号で終刊となった『花暦』の後継誌です。2020年1月に季刊誌として創刊します。「艸」は「草」の本字であり、くさかんむりの原形です。二本の草が並んで生えているさまを描いた文字で、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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