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花暦句会報:若草(平成30年12月8日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「秩父夜祭」、席題「枯」

高点3句
みそ汁に残る貝砂開戦日      針谷 栄子
水鳥の眠りの深きレノンの忌    山本  潔
秩父夜祭太古の海の怒涛音     岡戸 良一

空つ風農家の庭に干す達磨     岡戸 良一
猪汁の露店に匂ふ秩父かな     新井 洋子
ふるさとに常の顔あり秩父夜祭   山本  潔
赫々と夕日太れる枯れ蓮田     加藤 弥子
火を上げよ兜太の山河秩父祭    針谷 栄子
猫三度パン盗みゆく漱石忌     松本ゆうき
後悔も欲も失せしよ枯芙蓉     坪井 信子
干芋の側とほるたびつまみ食ひ   石田 政江
黄落や亡父似の人を振り返り    飯田 誠子
ゆるゆると五体ほどける日向ぼこ  沢渡  梢

(清記順)

一口鑑賞みそ汁に残る貝砂開戦日」〜栄子さんの句。昭和16年12月8日は太平洋戦争開戦の日。日本の不幸な歴史が始まった日として多くの人々の心に刻まれている。しかし、戦後73年が過ぎて「開戦日」がピンとこない若者も少なくないという。この句は「みそ汁に残る貝砂」が口に入ったときのジョリジョリとした何とも嫌な感じと「開戦日」を取り合わせたところが絶妙だ。決して忘れてはならない日を詠んで伝えることができるのも、俳句という最短詩型の優れたところ。「秩父夜祭太古の海の怒涛音」〜良一さんの句。夜祭見物には一度も行かれたことはないというが、太古の昔は海の底にあった秩父の歴史を踏まえてまとめた一句。サンゴ礁に覆われた海底の山が隆起して現れたのが武甲山であり、秩父の象徴でもある。夜祭は養蚕が盛んだった頃の織物市に由来し、武甲山信仰などと結び付いて300年以上の伝統を誇る。12月3日夜、6基の山車が勇壮な屋台囃子を奏しながら、順番に最大傾斜角25度の団子坂を登るシーンは圧巻。それはまさに「太古の海の怒涛音」と言っていい。(潔)
 [ 2018/12/09 11:23 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:連雀(平成30年12月5日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「鍋」

高点2句
豆腐屋の笊のあめ色十二月     加藤 弥子
寄鍋や独り身とほす娘来て     中島 節子

昼点す園の茶室や返り花      中島 節子
焼芋の英字新聞拾い読み      飯田 誠子
白鳥の飛来安堵と文とどく     横山 靖子
愛されて雪吊といふ枷の中     加藤 弥子
しのび寄る老いを諾ふ冬桜     春川 園子
この道は亡夫と歩みし帰り花    束田 央枝
冬桜ブロック塀を楯にして     田村 君枝
手仕事の畳屋いまも冬ぬくし    松成 英子
寄鍋や夫も故郷なく恙なく     向田 紀子
大方は地に裏返り朴落葉      田崎 悦子
目も耳も歯も衰へて冬のヨガ    進藤 龍子
牛鍋を囲む目と目と目と箸と    坪井 信子

(清記順)

一口鑑賞寄鍋や独り身とほす娘来て」〜節子さんの句。久しぶりに帰ってきた娘さんと寄鍋を囲んでいる。世間話をしたり、仕事の話を聞いたり、楽しい家族団欒のひとときである。しかし、母親としては娘さんが独身でいるのが気になって仕方がないのだろう。もはや「誰かいい人は?」などとは聞かないが、娘さんの幸せを願う親心はいくつになって変わらない。今、その中心にあるのが寄鍋なのである。「大方は地に裏返り朴落葉」〜悦子さんの句。朴はモクレン科の高木。葉は大きな楕円型で、長さは30センチ以上もある。存在感があるから、見ればすぐに分かる。作者は朴落葉を観察し、その大方は裏返っていると感じたのである。葉の表が薄茶色なのに対し、裏側は銀色を帯びている。裏返っている方が目立つから、そう感じたのかもしれない。写生を大事にしていることがうかがえる一句。(潔)
 [ 2018/12/09 09:24 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:すみだ(平成30年11月28日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点3句
旅の駅出づれば湖国冬の虹     貝塚 光子
武蔵野の雑貨屋通り冬ぬくし    岡崎由美子
茶の花や文士旧居の広き縁     岡戸 良一

冬晴や池面に映る天守閣      貝塚 光子
木枯しに舞ふ銀杏葉の床運動    大浦 弘子
風邪ひきて心細さの粥すする    桑原さかえ
バス停へ歩幅小さくなりて冬    岡崎由美子
綿虫やふつと昔の子守歌      加藤 弥子
大熊手上野駅舎に掲げらる     長澤 充子
鰰や雲とつながる能登の海     岡田須賀子
洗濯挟み音立て割れる寒の入り   工藤 綾子
甲斐の日を余さず抱く柿すだれ   高橋 郁子
散りしきる木の葉仄かに香る径   岡戸 良一

(清記順)

一口鑑賞茶の花や文士旧居の広き縁」〜良一さんの句。記念館として公開されているような文豪の旧居を訪れたのだろう。よく手入れされた庭には茶の木が小さな白い花をつけている。それだけでも穏やかな冬日和の景が目に浮かぶのだが、作者はさらに縁側に心を留めた。その広さがそのまま作家の人柄や作品の奥深さに重なり合ったのかもしれない。静かな味わいを感じさせる一句。「洗濯挟み音立て割れる寒の入り」〜綾子さんの句。洗濯挟みはほとんどプラスチック製だ。ベランダの物干しで風雨にさらされたり、日差しを受けたりしているうちに劣化し、ある日突然、パキンと割れてしまう。寒いときの方が割れやすいと思うのは気のせいだろうか。「寒の入り」が効いている。日常の中のささやかな出来事を巧みに詠んだ。「木枯しに舞ふ銀杏葉の床運動」〜弘子さんは初参加。「床運動」は体操競技の一つ。作者は木枯らしに吹かれて舞う銀杏の葉がまるで体操選手のようだと見て取った。ユニークな捉え方を素直に表現した。床をはみ出す葉も多かったのでは…。(潔)
 [ 2018/12/01 10:33 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:東陽(平成30年11月23日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「赤」「勤労感謝の日」

高点5句
悟りきる姿となりて枯蓮      野村えつ子
裸灯を揺らして下ろす大熊手    野村えつ子
緋の色の舞妓の蹴出し小春空    長澤 充子
山茶花の昨日の色を掃きにけり   安住 正子
しりとりでバス待つ父と子に小春  沢渡  梢

初霜や産みたて卵手にぬくき    安住 正子
赤帯の老師の眼冬稽古       岡戸 良一
仔犬の耳紅く透けをり小六月    浅野 照子
温湿布目蓋に勤労感謝の日     沢渡  梢
冬の日を撥ね谷川の万華鏡     新井 洋子
心地好き声耳元に帰り花      長澤 充子
芭蕉忌やはちきれさうな旅鞄    野村えつ子
絵手紙を描き勤労感謝の日     山本  潔

(清記順)

一口鑑賞緋の色の舞妓の蹴出し小春空」〜充子さんの句。作者は最近、京都旅行をしてきた。席題「赤」で咄嗟に舞妓さんの姿を思い浮かべたのだろう。「蹴出し」は、着物の裾を上げて歩くとき腰巻が露わになるのを避けるために重ね着る。小春空の下、舞妓さんが橋を渡る姿を目に浮かべてみよう。緋色の「蹴出し」にリアリズムがにじみ出ている。「温湿布目蓋に勤労感謝の日」〜梢さんの句。あと半年も経たないうちに平成の世が終わる。現代における労働の変化を考えたときに、これほど目を酷使する時代はかつてなかったのではないか。パソコンやスマートフォンの普及で我々は目を酷使している。今日において「勤労感謝」とは、突き詰めれば目を労わることに他ならない。揚出句の「温湿布目蓋に」は、まさにそんな一面を言い当てている。次の時代もこの流れは変わりそうにないが…。(潔)
 [ 2018/11/24 09:59 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:若草(平成30年11月10日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「花八手」、席題「温」

高点5句
いい人の顔していつも温め酒    山本  潔
鮟鱇のすべてを愛でて吊るし切る  神戸 康夫
いく重にも竿ふやしつつ柿つるす  石田 政江
蹲踞の水音和らぐ石蕗日和     新井 洋子
丸刈りの男の子集まれ花八手    坪井 信子

とろろ汁山ひとつづつ暮れてゆき  加藤 弥子
ビル壁は冬夕焼のスクリーン    坪井 信子
出で立ちのいつもスマート焼秋刀魚 神戸 康夫
白薔薇に仄かな紅や冬温し     岡戸 良一
みちのくの空は今年も柿たわわ   廣田 健二
温泉に猿の親子や雪催       新井 洋子
母恋し古里恋しおけさ柿      石田 政江
霜月の小便小僧に朝が来る     森永 則子
居酒屋の暖簾めくれて神無月    山本  潔
通りまで屋台賑ふ三の酉      沢渡  梢
柵固き魚市場跡花八ツ手      飯田 誠子
裏庭に井戸ある記憶花八手     針谷 栄子

(清記順)

一口鑑賞鮟鱇のすべてを愛でて吊るし切る」〜康夫さんの句。ご存じ、鮟鱇は深海魚。頭が大きく押しつぶされたような形をしており、口が広い。身が柔らかく、俎板でさばくのは難しい。調理の際は鉤に口を掛けて吊るし切りにする。尾鰭、肝、胃、卵巣、皮、えら、身のどれも鍋にすると美味しい。作者は「鮟鱇のすべてを愛でて」と言うことにより、この独特の生き物への敬意を表している。吊るし切りを詠んだ句といえば加藤楸邨の「鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる」がすぐ頭に浮かぶ。「いく重にも竿ふやしつつ柿つるす」〜政江さんの句。自ら吊し柿を作っている。渋柿の蔕を残して皮をむき、縄に吊して干していく。なかなか根気のいる作業だ。それでも「いく重にも竿ふやしつつ」という措辞に作り手の喜びが感じられる。柿もたくさん獲れたのだろう。軒下に干柿が連なる景は風情がある。むいた皮も干して糠床に混ぜれば、漬物がほのかに甘くなるという。(潔)
 [ 2018/11/11 14:07 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:連雀(平成30年11月7日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「冬隣」

高点2句
ひとり住む寧けさ重さ冬に入る   加藤 弥子
平成の空しみじみと今朝の冬    坪井 信子

木曽馬の牧閉める日や空青し    松成 英子
有り無しの浦風を身に花すすき   中島 節子
新宿に狐の嫁入り冬近し      向田 紀子
漆黒の湖へ誘ふ月の道       横山 靖子
五ケ月の胎児のすがた月清し    進藤 龍子
よろず屋の地下足袋売れし文化の日 坪井 信子
ひらひらひら影のひらひら秋の蝶  田村 君枝
銀座路地裏消えゆく人や冬隣    飯田 誠子
納豆の滋養を信じ半世紀      束田 央枝
保育士のピアノの稽古文化の日   春川 園子
リビングの奥へ日の差す冬隣    田崎 悦子
寺町に古き糀屋冬隣        加藤 弥子

(清記順)

一口鑑賞平成の空しみじみと今朝の冬」〜信子さんの句。「今朝の冬」は立冬の傍題。今年はいつもの冬の始まりとは違う。来年4月30日に天皇陛下が退位し、翌5月1日に皇太子さまが即位する。作者は立冬の朝の空をしみじみと眺めながら、平成最後の冬の始まりに感慨を抱いている。平成は決して明るい時代ではなかった。長引くデフレ経済、相次ぐ自然災害、原発事故。不安と緊張のつきまとう立冬の空が平成という時代のイメージにはぴったりかもしれない。「五ケ月の胎児のすがた月清し」〜龍子さんの句。身内のおめでたが近づいている。今では胎児の画像を見ることは容易になった。それはまるで月のような画像だったのかもしれない。この句は「月清し」が利いている。作者は9月の句会で「秋うらら嬰授かりし報せ受く」も詠んでいる。ところで、赤ちゃんは平成の最後、新しい時代のどちらに誕生するのかな。(潔)
 [ 2018/11/11 10:15 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:風の会(平成30年11月3日)

谷津バラ園、谷津干潟吟行(句会場:「日本海庄や」船橋南口店)

高点2句
秋澄むや陰影もたぬ裸婦の像    森永 則子
秋風や鳥に嫌はる杭ひとつ     岡崎由美子

大鉢のベルサイユの薔薇枯れ果つる 沢渡  梢
塩害の樹々の合間を秋の蝶     山本  潔
日輪へ光を返す残り鷺       針谷 栄子
立ち尽くす鷺晩秋の潮満ち来    森永 則子
晩秋の水面に映る鷺の影      廣田 健二
文化の日新種の薔薇の香の強く   岡戸 良一
白昼の翅の重たき秋の蝶      岡崎由美子

(清記順)

【吟行報告】秋晴れとなった文化の日。お昼前に京成線谷津駅に集合。幹事さんが人気店の串団子を購入し、商店街を抜けて谷津バラ園へ。10月の台風24号による塩害で、バラ園前の銀杏は無惨にも海側の葉が枯れていた。「塩害の樹々の合間を秋の蝶」(潔)。季節は秋と冬の境目。「大鉢のベルサイユの薔薇枯れ果つる」(梢)、「文化の日新種の薔薇の香の強く」(良一)。薔薇は夏の季語だが、今の季感を大事に、工夫しながら詠む。「秋澄むや陰影もたぬ裸婦の像」(則子)は園内の白い塑造を観察して詠んだ一句。「陰影もたぬ」という把握がお見事。干潟では白鷺や青鷺、鴫、鴨たちが羽を休めている。我々もお団子をいただいて一休み。それぞれの目に映る様子を言葉にしていく。「日輪へ光を返す残り鷺」(栄子)、「立ち尽くす鷺晩秋の潮満ち来」(則子)、「晩秋の水面に映る鷺の影」(健二)。鳥を詠む句が多くなる中、異彩を放ったのは次の一句。「秋風や鳥に嫌はる杭ひとつ」(由美子)。鳥ではなく、杭に焦点を当てた。季語の斡旋も絶妙。「白昼の翅の重たき秋の蝶」(由美子)も同じ作者。遊歩道の垣根の上に羽を広げていた大きな黒揚羽が、重そうに舞い上がったのを見逃さなかった。(潔)
 [ 2018/11/04 16:34 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:東陽(平成30年10月27日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「紅葉」「色」

高点3句
命尽くる刻は測れず秋深む     堤  靖子
うろこ雲だんだん貝になるわたし  山本  潔
権現様のお愛想ほどの初紅葉    浅野 照子

菊膾地酒は舌に響きけり      飯田 誠子
さわやかに一輪車漕ぐ膝頭     沢渡  梢
鬼門除けの札は金色空高し     堤  靖子
つまべにの種を弾きて人見知り   新井 洋子
水草の紅葉はじまる瀬音かな    長澤 充子
短冊にしるす一句や十三夜     岡戸 良一
削られし山の叫びか櫨紅葉     野村えつ子
竹林を抜けて直路や秋燕忌     山本  潔
山裾へ晩稲ひろごる黄の世界    浅野 照子
大岩の迫る神橋初紅葉       貝塚 光子
恙なき雁の渡りを祈りけり     斎田 文子
十月や身の影を鋤く畑仕事     安住 正子

(清記順)

一口鑑賞命尽くる刻は測れず秋深む」〜靖子さんの句。秋も深まる頃になると、誰しも寂寥の気持ちが強くなる。しかも辺りはしーんと静まりかえっている。そんなときに、作者はふと呟いたのである。「命はいつ尽きるか測れない」と。誰しも感じることを素直に詠んで共感を得た一句。「権現様のお愛想ほどの初紅葉」〜照子さんの句。日光の旅から帰ってきたばかりという。旅吟が早速、席題「紅葉」に結び付いた。日光東照宮のまだ色づき始めたばかりの紅葉を「権現様のお愛想ほど」と叙したところが何ともユニーク。お愛想ほどであっても、今年の紅葉と出会えたことへの喜びが伝わってくる。この句の「権現様」は徳川家康の尊称。(潔)
 [ 2018/10/28 10:08 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:すみだ(平成30年10月23日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点2句
余生なほ炎ゆるいろ欲し鶏頭花   加藤 弥子
空よりも地のぬくもりに秋の蝶   岡崎由美子

色鳥やはじめ冷たき木椅子の背   加藤 弥子
十三夜庭にをさなの忘れ物     岡崎由美子
跡地いま自然に帰り草の絮     岡戸 良一
木道に弾む靴音初紅葉       長澤 充子
治癒を待つ厨の隅の新走り     貝塚 光子
母何時か子の名を忘れ赤とんぼ   工藤 綾子
剥落の萬年橋や秋暮るる      高橋 郁子
町外れの無人交番神無月      桑原さかえ

(清記順)

一口鑑賞余生なほ炎ゆるいろ欲し鶏頭花」〜弥子さんの句。深紅の鶏頭花はまさに燃え上がる炎の色。余生と呼ぶべき年齢に入っていることを自覚しながら、なおも「炎ゆるいろ欲し」とは、生への執着を詠んだ句と言っていい。一日一日を大事に生きている作者だからこそ、鶏頭花の色が切ないくらいに愛おしいのではないか。そんな気持ちを素直に詠める俳句っていいなぁと思う。「空よりも地のぬくもりに秋の蝶」〜由美子さんの句。花壇か畑の土の上だろうか。秋の蝶がじっと止まっている。何だか心地良さそうな蝶の様子を眺めていると、地の温もりが感じられてくるようだ。うっかり空へ舞い上がれば、そこはもう冬の空気かもしれない。もうしばらくの間、秋の蝶でいたいと思っているのは作者自身に違いない。(潔)
 [ 2018/10/26 22:25 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:若草(平成30年10月13日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「秋燈・秋灯」、席題「街」「音」

高点3句
人はみな灯に戻りゆく暮の秋    加藤 弥子
秋灯シフォンケーキの月の色    坪井 信子
美濃紙の墨を吸ひあぐ秋灯下    針谷 栄子

木々を打つ私雨も秋の音      山本  潔
「草花を詠むといいよね」庭は秋  石田 政江
秋の蜘蛛築山うらに通せん坊    森永 則子
ハロウィンの魔女東京の街を行く  岡戸 良一
底紅の紅にとどかぬ街の音     坪井 信子
瓢箪や娘は母に物申す       廣田 健二
秋霖やアズナブールの黒いシャツ  沢渡  梢
横文字の読めぬ墓碑銘こぼれ萩   飯田 誠子
立飲みのネクタイ緩め秋ともし   新井 洋子
パソコンの値百円いわし雲     松本ゆうき
赤とんぼ肩に手に君は何者     針谷 栄子

(清記順)

一口鑑賞美濃紙の墨を吸ひあぐ秋灯下」〜栄子さんの句。兼題「秋灯」に対し、美濃紙という素材を持ってきたところが素晴らしい。美濃紙は岐阜県で奈良時代の頃から製造されている。伝統工芸品として知られ、その技法は重要無形文化財にも指定されている。澄みきった秋の灯に照らされた和紙に、たっぷりと墨を含んだ筆を置いた瞬間に墨が吸い込まれていく。和紙の質感とともに、墨の匂いもしてくるようだ。趣のある一句。「底紅の紅にとどかぬ街の音」〜信子さんの句。「底紅」は木槿のこと。赤紫や白などの花を咲かせる。中でも真っ白な花の底の部分が赤いものを底紅と呼ぶ。街から離れたお寺の境内や小さな公園、あるいは路地裏に咲く底紅だろうか。作者は赤い部分に視線を合わせながら、静寂の中にいる。席題「街」「音」の両方の文字を巧みに詠み込んだ。(潔)
 [ 2018/10/14 10:09 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
プロフィール

花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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