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花暦句会報:若草(平成31年4月13日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「蛙の目借時」、席題「地」

高点2句
目借時地雷を踏んでしまいさう    山本  潔
当り木に母の擂り癖さくら冷え    新井 洋子

目借時ブラックホールの気色(けしき)かな 松本ゆうき  
カーテンのふわり蛙の目借時     沢渡  梢
美容師に頭あづけて目借時      加藤 弥子
糸游や溶けだしさうな石仏      坪井 信子
行く先はブラックホール花筏     山本  潔
花冷や和服畳むも正座して      針谷 栄子
地球まで五千五百万光年の春     石田 政江
これはこれは桜隠しに酌む地酒    岡戸 良一

(清記順)

一口鑑賞カーテンのふわり蛙の目借時」〜梢さんの句。俳句で日常の中の何でもないシーンを詠むのは意外と難しい。この句はカーテンが揺れただけの場面を「ふわり」というたった3文字で描写した。これが「蛙の目借時」にうまく呼応して詩的な空間を生んでいる。「目借時」は春の眠気を誘う暖かさの中で、とりわけ蛙が鳴き始める頃はうつらうつら眠くなるという時候の季語。「地球まで五千五百万光年の春」〜政江さんの句。地球から5500万光年離れた銀河にあるブラックホールの映像がこのほど公開された。このニュースが背景にあるのだが、余計なことは一切言わずに「五千五百万光年」という距離だけを示し、その遥か彼方の春を俯瞰するかのように詠んだのである。破調も字余りもむしろ効果的だろう。壮大な一句。(潔)
 [ 2019/04/14 07:22 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:連雀(平成31年4月3日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「四月馬鹿」

高点2句
椅子にみな足ぶらぶらと入学児   束田 央枝
薄紙を剥ぐごと癒えて花菜風    矢野くにこ

花冷えや寺の奥なる玉座の間    松成 英子
マヌカンのシルクのドレス春浅し  坪井 信子
春暁や体内時計修正す       飯田 誠子
塀に沿ふたんぽぽの列好きな道   加藤 弥子
こぶし咲く八年前の地震の日も   春川 園子
満開の辛夷洗車の水弾く      田村 君枝
芽ぶくもの朝な朝なにいとほしき  横山 靖子
花冷や弦の調子の狂ひがち     中島 節子
塩むすび鴉に捕られ四月馬鹿    束田 央枝
深山寺や花の舞ひ込む能舞台    矢野くにこ
春三日月の低きを支ふ闇の張り   向田 紀子
夫の忌よ白木蓮に囲まれて     田崎 悦子

(清記順)

一口鑑賞椅子にみな足ぶらぶらと入学児」〜央枝さんの句。ピカピカの1年生が教室で椅子に座っている様子はまさにこんな感じだろう。嬉しくもあり、ちょっと不安でもあり…。「足ぶらぶらと」は子どもたちの心を映している。「薄紙を剥ぐごと癒えて花菜風」〜くにこさんの句。病が少しずつ快方に向かっていることを「薄紙を剥ぐごと」と表現した。きっと気持ちも前向きになってきたのだろう。「花菜風」が利いている!「花冷えや寺の奥なる玉座の間」〜英子さんの句。桜が咲いた後、思いがけず気温が下がって慌てることがある。そんな寒さが「花冷え」で時候を示す言葉。由緒ある寺での一句だろうか。冬の寒さとは違うが、「玉座の間」のひんやりとした空気が伝わってくるようだ。(潔)
 [ 2019/04/06 08:58 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:すみだ(平成31年3月27日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点2句
たんぽぽや何を訊いても頷く子   岡崎由美子
蘖や鉄扉重たき旧校舎       加藤 弥子

晩学の径に迷へり亀鳴けり     岡戸 良一
春愁の顔閉じ込めるコンパクト   加藤 弥子
いざやいざ蕾一斉花準備      大浦 弘子
大内の若葉の風に雅楽の音     高橋 郁子
草餅や記憶異なる姉妹       貝塚 光子
人とゐて一人の刻の桜かな     工藤 綾子
朧夜の庵の小窓灯りけり      長澤 充子
春愁や耳朶に馴染まぬイヤリング  岡崎由美子

(清記順)

一口鑑賞春愁の顔閉じ込めるコンパクト」〜弥子さんの句。「春愁」は春の物憂い気分。秋の「秋思」が思索的な深さを伴うのに対し、春ならではの甘美な気だるさといった感覚だろうか。この句がユニークなのは「春愁の顔」を「コンパクト」に閉じ込めるという発想だ。そうすることによって春の哀感を潔く断ち切ったのである。「秋思」ではこうはゆくまい。季語への理解があってこその一句。「春愁や耳朶に馴染まぬイヤリング」〜由美子さんの句も季語は動かない。弥子さんの句と異なる点は、「春愁」を身体感覚で捉えているところだろう。春という生命感あふれる季節に、わけもなく感じる物悲しさ。これを耳朶を通じて表現したのである。金属製の小さく軽いイヤリングが馴染まないという繊細な感覚が面白い。(潔)
 [ 2019/03/31 12:28 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:東陽(平成31年3月23日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「朧」「線」

高点3句
単線の電車来ぬ間の恋雀     岡崎由美子
街朧かつて名画座ありし角    野村えつ子
銀河鉄道一直線につばくらめ   浅野 照子

わが夢の遠ざかりゆく朧かな   岡戸 良一
園おぼろ岩に顎乗せ河馬睡る   新井 洋子
朧月「徂徠」「去来」は同じ意味 松本ゆうき
桜咲く小さき山にも神在す    野村えつ子
ガキ大将たりし友逝き春の星   岡崎由美子
明治座のはねて大川夕おぼろ   安住 正子
ひこばえや大空襲の語り部に   浅野 照子
沈丁の香の路地近く救急車    堤  靖子
ひとところ紅のはなやぐ初桜   飯田 誠子
曲がり切る都電の線路桜山    長澤 充子
子の家族見送る街の夕朧     斎田 文子
蛇口換える夫の奮闘うららけし  貝塚 光子
三味線の外す一音鳥雲に     山本  潔

(清記順)

一口鑑賞単線の電車来ぬ間の恋雀」〜由美子さんの句。席題「線」で詠まれた句だが、旅先での一コマを巧みに描いている。ローカル線の電車を待つ作者の前に現れた雀たち。雄が雌を追いかけるようにやってきたのだろう。春から初夏にかけて鳥は繁殖期を迎える。雄は雌の気を引こうとさまざまな仕種をする。それをじっと観察している作者の表情も含め、何とも微笑ましい光景だ。上五と中七で脚韻を踏み、言葉がリズミカルに流れた先に登場する「恋雀」に詩情が溢れる。「沈丁の香の路地近く救急車」〜靖子さんの句。沈丁花の香る路地。ふだんはのどかなはずの下町の空間に、救急車が来ているのである。作者の胸にちょっとした緊張が走る。決して珍しいことではないが、赤いランプや担架を運ぶ救急隊員の動きまで見えてくるようだ。沈丁の甘く強い香りに対し、非日常的な救急車をぶつけたことにより、読み手の想像力を掻き立てる。(潔)
 [ 2019/03/24 09:17 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:若草(平成31年3月9日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「初蝶」、席題「道」

高点3句
恐竜の季語ならば春浅きころ   坪井 信子
初蝶をあやつる糸のあるやうな  加藤 弥子
山や晴雪形の馬跳ねんとす    安住 正子

ベルト一つゆるめて歩く春の宵  松本ゆうき
初蝶やカタカタと児のランドセル 沢渡  梢
初蝶の舞ひ込む路面電車かな   山本  潔
鳥騒ぐわが庭先や春疾風     石田 政江
初蝶や第二志望に受かりし子   新井 洋子
プランターのざわめき始め初蝶来 安住 正子
初蝶の現世ひと日の汚れかな   針谷 栄子
ミモザ咲く庭に双子のベビーカー 廣田 健二
薔薇芽吹く人に疲れて人恋ひて  加藤 弥子
初蝶の翅やすませる扇塚     坪井 信子
願はくは春満月を天窓に     岡戸 良一
初蝶の薄絹ほどの重さかな    飯田 誠子

(清記順)

一口鑑賞恐竜の季語ならば春浅きころ」〜信子さんの句。「もしも『恐竜』という季語があったならば、浅春のころであってほしいものだ」。句意はこんなところだろうか。作者は大の恐竜好き。恐竜展や博物館にはせっせと足を運ぶらしい。恐竜のことを考え始めると、あれこれ想像が膨らむのだろう。「一度でいいから恐竜の句を詠んでみたかった」とは作者の弁だが、これからもどんどん挑戦してほしい。「山や晴雪形の馬跳ねんとす」〜正子さんの句。山腹の消え残った雪によってできた馬が、今まさに跳ねようとしているのである。「雪形」が春の季語。作者の故郷は能登半島。「山や晴」は春になってようやく晴れた北アルプスの雄大な景を思わせる。跳ね馬は北アルプスの笠ケ岳、白馬岳、上越の妙高山などが有名だ。福島の吾妻山には「雪うさぎ」が現れる。いずれも農作業開始の目安となる。(潔)
 [ 2019/03/10 09:53 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
プロフィール

花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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