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月別アーカイブ  [ 2012年04月 ] 

『花暦』平成24年5月号ダイジェスト

暦日抄     舘岡沙緻

古書店を左右に祝ぎへの春の坂
初花に思ひ馳せしも病む身かな
坂がかる根津権現の春の靄
枯蓮を掬ひ浚ひし水面かな
 
   入院
病院食の太巻寿司や春はどこ
逆光の窓の水仙色失せて
天井も見倦き春雲玻璃越しに
夕づきてローランサン色春の雲
春雲の無様となりて散り果てし
夜へ移る色となりゐし春の雲
春怨や夕映えの空暮れ残り
ブラインド閉づ春燈は生活の灯
注射後の青痣春を病みゐたり
とりやめし外出許可や花の雨
検温に生命たしかめ春を病む


 〔Web版限定鑑賞〕今月号は春の雲や空を詠んだ句が目立つ。主宰は3月下旬にまた癌の焼灼治療を受けた。今回は入院期間がやや長かったから、窓の外を眺めることも自ずと多くなったはずだ。「夕づきてローランサン色春の雲」。マリー・ローランサンは20世紀後半に活躍したフランスの画家。淡い色調で詩的な女性像を描いた。主宰が見た夕空はきっとやさしいピンクに染まっていたのだろう。外は桜が満開。画家だった亡き妹さんへの思慕の情が重なる。「夜へ移る色となりゐし春の雲」「春怨や夕映えの空暮れ残り」も哀愁がにじみ出た句。「病院食の太巻寿司や春はどこ」には思わず吹き出した。病院食に太巻寿司。これはちょっと嬉しかったに違いない。でもよく見ると干からびている。下五の「春はどこ」で諧謔が決まった!「検温に生命たしかめ春を病む」。突き詰めれば体温こそ命の証。「春を病む」の措辞から生に対する切実な思いが伝わってくる。お元気になられて、何よりです。(潔)

舘花集・秋冬集・春夏集抄
庫裡裏の赤き椿と鼠取り(加藤弥子)
放浪とは遠き青春二月逃ぐ(根本莫生)
貝ボタンの裏の歪みや鳥曇(浅野照子)
白魚を手より散らしてすまし汁(野村えつ子)
しののめや新聞少年雪漕ぎ来(相澤秋生)
エプロンをつけて厨に合格子(岡崎由美子)
湯気立てて寄木工房板敷間(堤靖子)
春寒や青年の素手花束ね(中島節子)
要塞とも浚渫船の陽炎へり(高久知恵江)
深川や海辺遠のく浅蜊飯(岡戸良一)
幸せ色の春のトマトの尖りをり(針谷栄子)
高住みにいつしか慣れし夕朧(森永則子)
雨だれの一日止まぬ涅槃の日(鶴巻雄風)
テーブルの脚の傾く梅見茶屋(田澄夫)

花暦集から
齢重ね妣との絆草おぼろ(吉崎陽子)
地震越えて豪雪越えて北国は(野中和子)
仏舎利に少しはなれて犬ふぐり(吉田精一)
花曇窓より聞こゆ三味の音(山崎正子)
狭庭なる雪の景色に籠り居り(川本キヨ)
海神の声を聞くかに桜貝(土屋天心)
空高く鳶の笛や麦を踏む(福岡弘子)

■ 『花暦』平成10年2月、創刊。主宰・舘岡沙緻。師系・富安風生、岸風三楼。人と自然の内に有季定型・写生第一・個性を詠う。

■ 舘岡沙緻(たておか・さち) 昭和5年5月10日、東京都江東区住吉町生まれ。42年、「春嶺」入門。45年、第9回春嶺賞受賞。63年、春嶺功労者賞受賞。平成4年、「朝」入会。岡本眸に師事。10年、「花暦」創刊主宰。句集:『柚』『遠き橋』『昭和ながかりし』『自註 舘岡沙緻集』。23年7月、第5句集『夏の雲』(角川書店)。


会員募集中
〒130-0022 墨田区江東橋4の21の6の916
花暦社 舘岡沙緻

お問い合わせ先のメールアドレス haiku_hanagoyomi@yahoo.co.jp

【24年5月の活動予定】
 1日(火)さつき句会(白髭)
 8日(火)花暦幸の会(すみだ産業会館)
 9日(水)連雀句会(三鷹)
11日(金)板橋句会(中板橋)
12日(土)若草句会(俳句文学館)
19日(土)木場句会(江東区産業会館)
21日(月)花暦例会(俳句文学館)
23日(水)すみだ句会(すみだ産業会館)
25日(金)天城句会(俳句文学館)
26日(土)風の会(事務所)
30日(水)花暦一泊吟行会(箱根 ~31日)
 [ 2012/04/29 09:38 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
プロフィール

花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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