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月別アーカイブ  [ 2015年09月 ] 

『花暦』ダイジェスト 平成27年9月号

暦日抄   舘岡沙緻

他郷めく棚の鬼灯朱を混じへ
昼も夜も一人暮しや盆の頃
鬼灯や夫子なき家売ることに
朝夕に人の手借りて盆の月
心の弱り肌のよごれ炎暑病む

〔Web版特別鑑賞〕今月の「暦日抄」はいずれも月遅れ盆のころの日常詠。<他郷めく棚の鬼灯朱を混じへ>。鬼灯(ほおずき)をお盆の棚に飾るのは、先祖の霊を迎える灯火に見立てるため。この句の場合、鬼灯は「朱を混じへ」と言っているので、赤くなりきる前のまだ青さが残る状態なのだろう。いつも見てきた赤い鬼灯とは異なる様子に、故郷から遠く離れたところいるような違和感を覚えているのではないか。
 <昼も夜も一人暮しや盆の頃>。主宰はもともと東京で一人暮らしだった。肝臓がんの焼灼治療を繰り返してきたが、今年5月からは頼り甲斐のある人のいる埼玉県本庄市へ転居した。そうは言っても、お盆のころとなれば、皆それぞれに忙しい。その分だけ一人の時間が長くなり、孤独感をかみ締めているシーンも多くなる。<朝夕に人の手借りて盆の月>はそんな孤独感を忘れる瞬間。他人の世話になることのありがたさと、そうせずには生きていられないことへの忸怩たる思いが入り混じる。
 「暦日抄」は主宰の日記であり、生きざまを詠んできた。<心の弱り肌のよごれ炎暑病む>。この句は上五が字余り。中七の「肌」は「はだへ(え)」と読む。記録的な暑さの中、心身ともに疲れ切った様子が痛々しいくらいに感じられる。二つの「の」はいずれも主格の助詞として読みたい。「心が弱り」「肌がよごれ」と自身の状態を並列で示し、疲れをより強く表現。さらに下五の畳み掛けるような措辞は主宰の得意とするところ。先師・岸風三樓は「自然諷詠にとどまらず、存分に己を投影せよ」と教えた。(潔)

舘花集・秋冬集・春夏集抄
地ぼてりや青竹きしむ辻回し(浅野照子)
海彦の島を間近に枇杷熟るる(池田まさを)
渓青葉茶屋の一間は岩の上(野村えつ子)
麦秋の明るさをわが余生とも(相澤秋生)
本郷はわが青春や薔薇の昼(春川園子)
海の日や地球儀青きまま古りて(岡崎由美子)
潮風や手に余るほどポピー摘む(山崎千代子)
片裾を湖に沈めて虹二重(小泉千代)
椎の花しきりに降りて降りやまず(高橋梅子)
山裾の小田に根を置く虹の橋(小池禮子)
古傷の痛む日のあり虎が雨(橘 俳路)
無住寺に通ふ僧在り花石榴(市原久義)
長梅雨や古きシネマに時忘れ(福岡弘子)
昼深き洋食店の蔦かづら(小西共仔)

■『花暦』平成10年2月、創刊。主宰・舘岡沙緻。師系・富安風生、岸風三楼。人と自然の内に有季定型・写生第一・個性を詠う。
■舘岡沙緻(たておか・さち) 昭和5年5月10日、東京都江東区住吉町生まれ。42年、「春嶺」入門。45年、第9回春嶺賞受賞。63年、春嶺功労者賞受賞。平成4年、「朝」入会。岡本眸に師事。10年、「花暦」創刊主宰。24年、俳人協会評議員。句集:『柚』『遠き橋』『昭和ながかりし』『自註 舘岡沙緻集』。23年7月、第5句集『夏の雲』(角川書店)。


お問い合わせ先のメールアドレス haiku_hanagoyomi@yahoo.co.jp
 [ 2015/09/01 21:53 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
プロフィール

花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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