花暦句会報:若草(平成30年5月12日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「新樹」、席題「友」

高点3句
弓を引く友の目力新樹光         針谷 栄子
万緑といふうつし世に浸りをり      加藤 弥子
使ひかけの口紅棚に沙緻忌かな      石田 政江

午後の薔薇動かぬ刻の中にあり      廣田 健二
つややかに新樹の応ふ灯をともす     加藤 弥子
復興の力をつなぐ祭笛          岡戸 良一
沙緻の碑に余花のひとひら幸あらば    石田 政江
クレーンの五月雨雲を突く構へ      坪井 信子
オムライスのハートケチャップバードデー  新井 洋子
蜜豆の匙のひかりも沙緻忌かな      針谷 栄子

(清記順)

一口鑑賞復興の力をつなぐ祭笛」〜良一さんの句。東日本大震災の被災地は復興創生期にある。道のりは長いが、多くの地域でさまざまな祭りが復活している。もともと夏の祭りは農作物の疫病退治、風水害除けを祈願するために行われてきた。被災地の祭りは人々を集め、復興の力をつないでいく。この句は、「祭笛」が効いている。「オムライスのハートケチャップバードデー」〜洋子さんの句。「の」以外は全てカタカナ。もちろん意識して並べたのだろう。「ハート」と「バード」の語感が楽しい。何でオムライス?と思ったが、よくよく考えてみると、鶏の卵がなければ作れない。ハートのマークに愛鳥の気持ちが込められている。(潔)
 [ 2018/05/19 12:31 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:20周年・沙緻忌の集い(平成30年5月6日)

花暦20周年・沙緻忌の集い句会(主婦会館プラザエフ「スイセンの間」)

【天】
はつ夏の波追ふ砂の光りけり    岡崎由美子

一口鑑賞 初夏の砂浜。打ち寄せた波が引いていく。寄せては返す波を作者はただじっと見つめている。光っているのは波だけではない、砂も光っている。砂は波にさらわれるのではなく、波を追っている。この句は「波追ふ砂」という把握が見事だ。単純写生にとどまらず、季語と響き合って軽い躍動感が生まれている。

【地】
薔薇ひらく刻のしづけさ地の祈り  加藤 弥子

一口鑑賞 早朝だろうか、作者は物音一つしない静けさの中にいる。今まさに薔薇が開くときだと感じながら、あることに気づく。それは薔薇が得体の知れない力によって咲こうとしているということ。それを「地の祈り」と言い止めたときに一句が成った。静けさは地の祈りであり、地の祈りによって薔薇は咲くのである。

【人】
幸せは手の鳴る方へチューリップ  坪井 信子

一口鑑賞 この句は「目隠し鬼」という子どもの遊びが下敷きになっている。同時に「幸せなら手をたたこう」という歌があるように、手をたたく行為に何か特別な意味を見いだしている。「幸せは手の鳴る方へやってくる」。そんなふうに思えた頃の象徴として「チューリップ」は作者の心にいつも咲いているのではないか。

【高点4句】
入院の幹事に届け花菜風      森永 則子
墨東に帰雁の空の残りけり     野村えつ子
読み返す師からの朱筆聖五月    吉崎 陽子
ジャム煮込む甘夏好きの師の忌来る 長澤 充子


【注目10句】
千年の時空を超えて百千鳥     市原 久義
大川の遠き橋見え風五月      岡戸 良一
竜天に鏝絵の竜は軒下に      松成 英子
丁寧に生くるは難く弥生尽     相澤 秋生
終章なく暦重ねてあたたかし    安住 正子
老桜の洞に木霊の闇のあり     新井 洋子
師の句碑に希望の灯り凍てつく手  石田 政江
奥能登の岬に仰ぐ遅桜       貝塚 光子
永代橋も勝どき橋も鳥ぐもり    堤  靖子
ひらがなに混じるカタカナ春の詩  廣田 健二

 [ 2018/05/13 16:24 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:連雀(平成30年5月2日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「薄暑」

高点3句
下校児の何にふざけて柿若葉     中島 節子
細りたる玉川上水桜桃忌       松成 英子
八十八夜夜風の甘くなりにけり    加藤 弥子

アルプスの稜線映す代田かな     横山 靖子
暗がりに群れて金蘭明りかな     春川 園子
一門の集ふ師の忌や夏立ちぬ     束田 央枝
町川の瀬音ひろがる薄暑かな     田崎 悦子
牛の居ぬ牛小屋いまも逢長く     進藤 龍子
京劇の歌のもれくる牡丹かな     松成 英子
緑立つ園の要の女松         田村 君枝
風力発電の塔痩尾根に鳥曇      向田 紀子
窓丸きカプセルホテル愛鳥日     加藤 弥子
青空のありて動かぬ鯉のぼり     中島 節子
ベビーカー・杖・はと・交差点薄暑  坪井 信子
花粉症病院バス停人溜り       根本 莫生

(清記順)

一口鑑賞下校児の何にふざけて柿若葉」〜節子さんの句。下校する子どもたちがふざけ合っている。何が面白いのかは分からないが、楽しそうな姿や声は昔から変わらない。艶やかでまぶしい「柿若葉」との取り合わせにより、子どもたちの生き生きとした様子が見えてくる。「ベビーカー・杖・はと・交差点薄暑」〜信子さんの句。初夏の交差点の風景をたった17音で巧みにスケッチした。若いお母さんが押す「ベビーカー」の赤ちゃん。「杖」をつく紳士あるいは老婆。人々をよける「はと」。作者は何も言っていないのに、読み手の目には交差点の映像が自在に広がる。少し汗ばみながら、軽快に動ける「薄暑」の街。季語への信頼が生み出した一句。(潔)
(清記順)
 [ 2018/05/03 11:04 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
プロフィール

花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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