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『花暦』平成24年12月号ダイジェスト

暦日抄     舘岡沙緻

色抜けて墨絵ぼかしに曼珠沙華
老骨の根を張り通す冬の木々
昭和とは掻巻の衿黒天鵞絨
木犀や八十路といへど辞書とペン
足弱に地の凸凹やそぞろ寒
眠れば癒ゆる癒ゆると信じ冬籠
  
   同人小林公雄さん逝く
いまごろは神田古書街冬灯 
   森下
一の橋二の橋三と冬日和
木賃宿とは死語か「高橋」冬に入る
銀杏黄葉晴れや元祖のカレー麺麭
のらくろ館に乳母車の児町は冬

   NHK青山教室
新講座はじまる冬の黒ビール
   金沢三句
加賀の冬「まむし黒焼」板看板
櫛・笄町屋に残り加賀しぐれ
治部煮うどん添へて昼餉の加賀御膳


 〔Web版限定鑑賞〕我々は多彩な日常の中に生きている。ましてや結社の主宰ともなれば、弟子の指導はもちろんのこと、対外的にも心を配る。「新講座はじまる冬の黒ビール」。長年、講師を務めているNHK文化センターもその一つ。この冬からは青山教室がスタートした。82歳で講座を受け持つ主宰の感慨が「冬の黒ビール」に込められている。「老骨の根を張り通す冬の木々」も、まさに老体に鞭打つ自分を、冬木と重ね合わせた句。同人の訃報に接すれば、「いまごろは神田古書街冬灯」と故人を偲ぶ。ついこの間まで句会の席におられた方の矍鑠(かくしゃく)とした姿が思い出される。あるいは旅をすれば、「櫛・笄町屋に残り加賀しぐれ」。こうした日常の中で去来するさまざまな思いを17音に凝縮させたものが俳句であり、「暦日抄」は主宰の生の記録といえる。「色抜けて墨絵ぼかしに曼珠沙華」。盛りを過ぎた彼岸花は鮮やかな色が次第に落ちていく。「色抜けて」の措辞と「墨絵ぼかし」という把握の仕方が、この花のどこか恐ろしげな様子にもぴたりと合う。写生の極意が垣間見える。(潔)

舘花集・秋冬集・春夏集抄
霧とんで断崖現るる岳樺(加藤弥子)
みづうみのさざ波走り新松子(野村えつ子)
葉をもたぬ茎のさみしや曼珠沙華(相澤秋生)
川に舟橋に人ゐる良夜かな(堤 靖子)
稲妻や土鍋の粥の炊きあがり(向田紀子)
日も水もさらさら秋の金魚かな(新井洋子)
青年のリュックに挿せる秋団扇(中島節子)
象痩せて秋暑の水と戯れる(坪井信子)
均等に錘とならむ榠櫨の実(高久智恵江)
赤松の濡れても赤し秋の雨(矢野くにこ)
十六夜や男女の病衣色違へ(針谷栄子)
朱鷺なれば島の夕空紅ともる(森永則子)
漫画喫茶リュックの底の落花生(大野ひろし)
葉の無きがゆゑに際立つ曼珠沙華(山本 潔)

印象句から
切株は風の寄り処桐一葉(吉崎陽子)
秋澄みて川の蛇籠の崩れをり(松川和子)
晴れ日つづき風のままなる金魚玉(川本キヨ)
破芭蕉夜更けてよりの葉擦れかな(土屋天心)
一番風呂の檜の匂ふ秋の暮(福岡弘子)
亡き人の好物供へ秋彼岸(梅津雪江)
秋澄めり防災井戸の押しポンプ(梅林勝江)

■ 『花暦』平成10年2月、創刊。主宰・舘岡沙緻。師系・富安風生、岸風三楼。人と自然の内に有季定型・写生第一・個性を詠う。

■ 舘岡沙緻(たておか・さち) 昭和5年5月10日、東京都江東区住吉町生まれ。42年、「春嶺」入門。45年、第9回春嶺賞受賞。63年、春嶺功労者賞受賞。平成4年、「朝」入会。岡本眸に師事。10年、「花暦」創刊主宰。俳人協会評議員。句集:『柚』『遠き橋』『昭和ながかりし』『自註 舘岡沙緻集』。23年7月、第5句集『夏の雲』(角川書店)。


会員募集中
〒130-0022 墨田区江東橋4の21の6の916
花暦社 舘岡沙緻

お問い合わせ先のメールアドレス haiku_hanagoyomi@yahoo.co.jp

【24年12月の活動予定】
 3日(月)花暦吟行会(皇居外苑周辺・和田倉噴水公園)
 4日(火)さつき句会(白髭)
 8日(土)若草句会(俳句文学館)
11日(火)花暦幸の会(すみだ産業会館)
12日(水)連雀句会(三鷹)
14日(金)板橋句会(中板橋)
15日(土)木場句会(江東区産業会館)
17日(月)花暦例会・天城合同句会(俳句文学館)
26日(水)すみだ句会(すみだ産業会館)
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 [ 2012/12/02 14:49 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
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プロフィール

花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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