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花暦句会報:沙緻忌の集い

沙緻忌の集い句会(平成29年5月6日、主婦会館プラザエフ「スイセンの間」)

【天】
蔵元の水神祀る立夏かな  進藤 龍子

 一口鑑賞:「立夏かな」という詠嘆が清々しい。酒造りに水は欠かせない。地中で浄化され、伏流水となった後に湧き出る水は自然の恵みである。立夏の頃といえば、前年秋に仕込んだ日本酒は熟成期に入る。一方、農家では出来秋に向けて田植えが始まる。夏場の渇水期を前に酒蔵は水神に祈りを捧げ、五穀豊穣を願うのである。(潔)

【地】
師の好みし薔薇といふ文字薔薇真紅 加藤 弥子

 一口鑑賞:沙緻師は「俳人たるもの薔薇ぐらい漢字で書けないようではだめよ」と厳しく指導した。先師・富安風生の教えだったという。この句は薔薇という字を一画一画、丁寧に書いた沙緻師の姿を思い出して偲んでいる。作者の脳裏に浮かんでいる「文字の薔薇」と眼前の「真紅の薔薇」が二重構造になっているユニークな句。(潔)

【人】
胸の内の師と話しつつ蕗を煮る   貝塚 光子

 一口鑑賞:これも沙緻師を偲ぶ一句。「蕗」は夏の季語。醤油で煮たのが伽羅蕗。作者は、蕗を煮ながら日常の中であれこれと思うことについて、「先生だったらどうしますか?」と問いかけているのである。原句は下五が「蕗煮かな」だったが、「蕗を煮る」としたことで、より心象的な味わいが増すのではないか。(潔)

【上位3句】
鯉幟天上の水ゆたかなり      野村えつ子
逝きてなほ師は師でありぬ柚子の花 市原 久義
絵硝子の聖者が透ける新樹光    矢野くにこ

【高点6句】
桐咲いて零れて師との月日かな   岡崎由美子
下町に昭和を生きて朴の花     高久知惠江
師と酌みし夢を朧の底の底     坪井 信子
師の句碑へ続く空あり五月晴    針谷 栄子
とこしへの能登の一塔鳥帰る    岡戸 良一
ふりしぼる文字の筆圧薔薇の雨   工藤 綾子

泰山木空蒼ければ蕾解く      相澤 秋生
竹皮を脱ぎて新たな風に立つ    浅野 照子
古書店の「岩波」焦がす大西日   安住 正子
愛鳥日俳は我が子と師は言へり   新井 洋子
大川の光溢るる初桜        飯田 誠子
塔見えて啜る甘酒青畳       池田まさを
師の句碑に再びの春五重塔     石田 政江
錦糸町小公園の花吹雪       大野ひろし
やすらぎの能登の風添ふ初桜    岡田須賀子
夢を聴くことの嬉しき花の下    小池 禮子
師の教へ師のかんばせや白牡丹   斎田 文子
新緑や大樹の下の駐在所      白崎千恵子
隧道の先の眩しさ里若葉      高橋 郁子
五月来る師の胸元のペンダント   田崎 悦子
眼裏の師の面影や花の雨      田村 君枝
師の縁再会叶ふ五月かな      束田 央枝
失ひしものは数へず花の中     堤  靖子
ぜんまいを揉んで余生を寛げる   鶴巻 雄風
沙緻忌てふ句座に達かぬうた心   長岡 幸子
師に傘を差し掛けし日や青葉雨   長澤 充子
歳時記に遺る師の句や冷し酒    中島 節子
能登の風受けて若葉の中にをり   長野 紀子
「花暦」の絆は深し著莪の花    中村 京子
寄り添ふて沙緻忌の集ひ聖五月   中村 松歩
いまもなほ師の声澄みて青葉風   鳰川宇多子
北陸の奥津城どころ花あらし    根本 莫生
春光や下田の朝の海鼠壁      馬場 直子
亡師の朱筆いまも著しや花は葉に  春川 園子
花嫁のごとく少女は薔薇を抱く   廣田 健二
師を慕ふ絆の堅し風五月      福岡 弘子
聖五月来年もまた沙緻忌の日    松川 和子
忘れ潮あれば覗きて磯菜摘     松成 英子
師を偲ぶ話よもやま花は葉に    向田 紀子
せせらぎや春光の綾揺れてをり   森永 則子
春近し椅子そのままに外カフェ   山室 民子
熱き湯に薔薇を浮かべて沙緻忌来る 山本  潔
師を恋ふや花の暮色の中にをり   吉崎 陽子


 ※一部、独断と偏見で添削した句があります
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 [ 2017/05/13 15:33 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
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花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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