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『花暦」ダイジェスト/平成27年12月号

暦日抄   舘岡沙緻

荒霧や武甲山は嶺々を連ねたる
武甲山霧寄せまじき白き肌
雨もよし秩父漢に曼珠沙華
鐘連打錆びし萩垣女ごゑ
宿の卓挟み床敷く良夜かな
昭和昏し駱駝のシャツの亡父の衿
恋やつれ柱の影の冬薔薇
 心ちゃん五歳
山中の十月桜おさげ髪

〔Web版特別鑑賞〕今年の花暦の一泊吟行は9月下旬に埼玉県秩父市へ行った。主宰が暮らす本庄市からは車で1時間ほど。都内からは西武池袋線の特急に乗れば約1時間20分。今月の「暦日抄」にはそのときの吟行句が並んでいる。
 秩父盆地の南側にそびえる武甲山(標高1304メートル)は街の象徴。<荒霧や武甲山は嶺々を連ねたる>。旅行初日の午前中は時雨て、武甲山に霧がかかっていた。日本列島の草創期にサンゴ礁が隆起したというこの山は良質な石灰質で、明治期よりセメントの原料として採掘が進められてきた。露わになった岩肌は雄々しい。そこにかかる霧を主宰は「荒霧」と見たのである。<武甲山霧寄せまじき白き肌>。この句も山と霧が対峙している。霧を寄せ付けまいとする山肌は作者の心象風景か。
 <雨もよし秩父漢に曼珠沙華>。この句を一読して思い浮かんだのが「曼珠沙華どれも腹出し秩父の子」。秩父出身の金子兜太が郷里の子どもたちに対する親しみを詠んだ有名な一句である。主宰の句の「秩父漢(おとこ)」は、かつては兜太の句の中のような「秩父の子」だったに違いない。<宿の卓挟み床敷く良夜かな>。俳句で「良夜」と言えば、中秋の名月の夜。秩父吟行はまさにその日だった。卓を挟んで敷かれた床が旅情をかきたてる。
 ところで吟行の際、バスの中でクイズが出た。次の六つの句の作者を当てましょうという内容。選択肢は五つ(二句は同じ作者)。秩父へ行けなかった皆さんも是非、挑戦してみてください。(潔)
 1、これよりは尚奥秩父鮎の川 2、曼珠沙華どれも腹出し秩父の子 3、刈り伏せの萱に日渡る裏秩父
 4、秩父夜祭とは聞くだにもあな寒や 5、山国や空にただよう花火殻 6、雨よ馬追と秩父鉄道員歌ふ
 (あ)富安風生 (い)高浜虚子 (う)金子兜太 (え)阿部完一 (お)上田五千石 
           <正解>1=い、2=う、3=お、4=あ、5=う、6=え 

舘花集・秋冬集・春夏集抄
昭和遠し売場の隅の濁り酒(根本莫生)
息子の髪に白きもの増ゆばつたんこ(浅野照子)
島の子の顔みな似てる鰯雲(池田まさを)
千枚田一枚となる稲穂波(野村えつ子)
山幾重雲も幾重や鳥渡る(相澤秋生)
郷里の墓移す話や夜の長き(春川園子)
人住まぬ庭に月光行き渡る(田村君枝)
秋霖や部屋の電球切れしまま(小泉千代)
朝霧をさらりと剥ぎて神の山(小池禮子)
雁渡し白き灯台暮れ残る(飯田誠子)
磯の香の坂上り来る秋日和(工藤綾子)
あつあつにぶつかけ卵今年米(長野紀子)
満月や堀を囲みて蔵の町(長澤充子)
名月に願ひを寄せる今日のあり(吉崎陽子)

■『花暦』平成10年2月、創刊。主宰・舘岡沙緻。師系・富安風生、岸風三楼。人と自然の内に有季定型・写生第一・個性を詠う。
■舘岡沙緻(たておか・さち) 昭和5年5月10日、東京都江東区住吉町生まれ。42年、「春嶺」入門。45年、第9回春嶺賞受賞。63年、春嶺功労者賞受賞。平成4年、「朝」入会。岡本眸に師事。10年、「花暦」創刊主宰。24年、俳人協会評議員。句集:『柚』『遠き橋』『昭和ながかりし』『自註 舘岡沙緻集』。23年7月、第5句集『夏の雲』(角川書店)。

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 [ 2015/12/05 17:50 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
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花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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