FC2ブログ

花暦句会報:すみだ(平成30年8月29日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点3句
影連れて流るるものや水の秋      加藤 弥子
ダリア真つ赤ゴスペル漏るる園真昼   高橋 郁子
秋暑し齝む牛の尾の遊び        工藤 綾子

海近き駅のポスター夏の果       岡崎由美子
朝顔の紺鉄柵を埋め尽くす       長澤 充子
果樹園の耳をつんざく威し銃      工藤 綾子
空高し牧の牛にもある序列       高橋 郁子
雪渓に残る靴跡空の青         桑原さかえ
曼殊沙華活けてみたしや火焔土器    貝塚 光子
百日紅百日咲けば百の夢        加藤 弥子
鰯雲江東運河縦横に          岡戸 良一

(清記順)

一口鑑賞秋暑し齝む牛の尾の遊び」〜綾子さんの句。「齝む」は「にれかむ」と読む。いわゆる「反芻」のこと。一度飲み込んだ牧草を口に戻して噛み直している牛が尾を振っている。まだ残暑の厳しい牛舎の中だろうか。それでも牛にとっては至福の時なのかもしれない。「尾の遊び」とユーモラスに書き留めたことで、牛の表情まで見えてくるようだ。「空高し牧の牛にもある序列」〜郁子さんの句。こちらは晴れ渡った空の下に放牧された牛たち。牛は群れて行動する動物。よく見ているとリーダーらしき存在が目に付いたのだろう。「牛にもある序列」は人間社会との対比。(潔)
 [ 2018/09/01 09:04 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:東陽(平成30年8月25日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「処暑」「音」

高点5句
黄昏を音に変へたる河鹿笛      山本  潔
登り来て音無き世界旱星       斎田 文子
新涼や古き鏡に背を正す       貝塚 光子
被災地の中天潤む赤い月       長澤 充子
入れ替えて濃き茶一服処暑の朝    安住 正子

扇風機昭和の音を立ててをり     山本  潔
霧来れば霧の粧ひ山衣        斎田 文子
引き波に小石ころがる音涼し     長澤 充子
花梯梧遠き昭和の火の記憶      飯田 誠子
秋薔薇柩の姉はオフェリア      浅野 照子
草の花愛しむ老いを諾へり      岡戸 良一
処暑の日の良寛の海波高く      堤  靖子
駅頭は一会の別れ雁の頃       新井 洋子
うら若き縄文土偶夜の桃       貝塚 光子
水琴窟の音の間遠や秋の昼      安住 正子
一片の雲寄せつけず処暑の山     野村えつ子

(清記順)

一口鑑賞登り来て音無き世界旱星」〜文子さんの句。酷暑を逃れて高原の温泉地へ行った際の景という。席題「音」でとっさに詠んだ一句。皆、どんな音を詠もうかと苦吟する中、発想を変えて「音なき世界」という措辞を思いついたところがお手柄。「旱星」は夜空に赤みを帯びて輝く星。この夏は火星が地球に最接近した。静寂の中で観る旱星に一体何を思ったのだろう。「一片の雲寄せつけず処暑の山」〜えつ子さんの句。もう一つの席題「処暑」の句。立秋後15日目の8月23日頃になると暑さがやむ。今年の暑さはなかなか収まりそうにないが、「処暑」の声を聞けば、空も山も次第に秋の装いを始める。「一片の雲」はまだ夏の雲だろうか。それを決して寄せつけようとしない山を「処暑の山」と見て取った。季題をしっかり押さえて詠んだ一句。(潔)
 [ 2018/08/26 09:21 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:すみだ(平成30年7月25日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点3句
原爆忌鶴折る指も老いにけり     加藤 弥子
さくらんぼ含みひとりもまた愉し   加藤 弥子
孤食にも黙にも慣れて冷奴      高橋 郁子

汗光る津軽じょんがら撥捌き     高橋 郁子
雲海や女ばかりの露天風呂      桑原さかえ
蜘蛛の囲に捕はるいのち吹かれをり  岡崎由美子
復元の茶亭の木の香風涼し      貝塚 光子
百日紅身の置き場なき晴続く     加藤 弥子
放る人受け手も確と西瓜畑      工藤 綾子
鬼灯市夕ぐれ匂ふ浅草寺       長澤 充子
夏草やむかし鉄路のありし跡     岡戸 良一

(清記順)

一口鑑賞孤食にも黙にも慣れて冷奴」〜郁子さんの句。一人暮らしの高齢者が急増する中、「孤食」は社会問題化している。栄養不足になったり、栄養バランスが崩れたりすることで、心身に悪影響を及ぼすからだ。作者はそんな「孤食」の問題を感じつつ、「黙にも慣れて」と言うことで寂しさを振り切っている。「冷奴」のようにさっぱりと、涼しく。「夏草やむかし鉄路のありし跡」〜良一さんの句。句意は明解だ。かつてそこに線路があったというだけなのだが、この句が妙に郷愁を呼ぶのは、上五の「夏草や」が利いているからだろう。「夏草」「鉄路」とくれば、山口誓子の名句「夏草に汽罐車の車輪来て止まる」がすぐ思い浮かぶ。きっと作者も口ずさんだに違いない。(潔)
 [ 2018/07/28 08:26 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:若草(平成30年7月14日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「心太」、席題「還」

高点3句
待ち人あり句座ありけさの蟬時雨   山本  潔
幼子のフォークに掛かる心太     森永 則子
七夕や転勤地よりお還りなさい    加藤 弥子

知らぬ間になくなるのよね梅漬は   山本  潔
衒ひなく愛想もなくて心太      新井 洋子
毛虫焼く前世の命に還れよと     坪井 信子
「この路地は抜けられません」竹床几 加藤 弥子
あやかしの手織りか烏瓜の花     岡戸 良一
突然の昼の花火の虚ろかな      森永 則子
梅漬けて干される出番待つばかり   石田 政江
返還の遠き日思ふ沖縄忌       廣田 健二

(清記順)

一口鑑賞幼子のフォークに掛かる心太」〜則子さんの句。幼い子が心太(ところてん)を食べている。フォークといっても金属製ではなく、プラスチックでできた丸みのあるものだろう。覚束ない手つきで心太を口へ運ぶのはなかなか難しい。お母さんが手伝ってくれたのかもしれない。フォークに心太がかかったことを喜ぶ子の姿が目に浮かぶようだ。作者の優しい眼差しが感じられる。「毛虫焼く前世の命に還れよと」〜信子さんの句。席題「還」による即吟。句意は明解だ。焼かれる毛虫に対して祈りを捧げている。あらゆる事物や現象に魂が宿るという「アニミズム」に通じる一句。今年2月に他界した金子兜太は「生きもの感覚」の重要性を解いた。(潔)
 [ 2018/07/15 08:45 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:連雀(平成30年7月4日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「汗」

高点2句
朝食は婿の手料理夏大根       進藤 龍子
初蝉の二タ声三こゑ幼の忌       加藤 弥子

紫外線避け人を避けサングラス    塚田 央枝
腱鞘炎やうやく癒へて瓜刻む     進藤 龍子
夏帽子風をふはりと喜寿祝ふ     飯田 誠子
烏瓜一夜の花の白く裂け       松成 英子
ねぶた笠目深に我も跳ねし夜     横山 靖子
玫瑰や海見て心立て直す       岡崎由美子
大好きなひまわり咲いて児の忌来る  加藤 弥子
宅配の男汗拭く昇降機        中島 節子
上水の一直線の青葉闇        向田 紀子
木工所の隅南天の花の屑       田村 君枝
青柿の短き命ころげ落ち       田崎 悦子
熱中症てふ病名のもとに臥す     根本 莫生
風鈴の舌(ぜつ)を捉へし夜風かな  坪井 信子

(清記順)

一口鑑賞紫外線避け人を避けサングラス」〜央枝さんの句。一読して句意は明解だが、ちょっと考えさせられる。この句のサングラスは「紫外線を避(よ)ける」「人を避(さ)ける」という二つの役割を持っている。前者が物理的な理由なのに対し、後者は明らかに心象的な意味合いが強い。作者の意図は後者の方にあるのだろう。さらりと詠みながら、心象を込めた詠み方にドキリとさせられる。「烏瓜一夜の花の白く裂け」〜英子さんの句。そういえば烏瓜の花を見たことがない。調べてみると、「屈託のない赤い実からは想像もつかない、レースのような繊細さをもった白い花」(「日本の歳時記」)とある。作者は、この花をしっかりと見たのであろう。夕方から夜にかけて咲く神秘の白い花。是非とも見てみたい。(潔)
 [ 2018/07/07 11:02 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
プロフィール

花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

最新トラックバック
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
1265位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
小説・詩
45位
アクセスランキングを見る>>
花暦カウンター
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
検索フォーム
QRコード
QR