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花暦句会報:連雀(平成30年11月7日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「冬隣」

高点2句
ひとり住む寧けさ重さ冬に入る   加藤 弥子
平成の空しみじみと今朝の冬    坪井 信子

木曽馬の牧閉める日や空青し    松成 英子
有り無しの浦風を身に花すすき   中島 節子
新宿に狐の嫁入り冬近し      向田 紀子
漆黒の湖へ誘ふ月の道       横山 靖子
五ケ月の胎児のすがた月清し    進藤 龍子
よろず屋の地下足袋売れし文化の日 坪井 信子
ひらひらひら影のひらひら秋の蝶  田村 君枝
銀座路地裏消えゆく人や冬隣    飯田 誠子
納豆の滋養を信じ半世紀      束田 央枝
保育士のピアノの稽古文化の日   春川 園子
リビングの奥へ日の差す冬隣    田崎 悦子
寺町に古き糀屋冬隣        加藤 弥子

(清記順)

一口鑑賞平成の空しみじみと今朝の冬」〜信子さんの句。「今朝の冬」は立冬の傍題。今年はいつもの冬の始まりとは違う。来年4月30日に天皇陛下が退位し、翌5月1日に皇太子さまが即位する。作者は立冬の朝の空をしみじみと眺めながら、平成最後の冬の始まりに感慨を抱いている。平成は決して明るい時代ではなかった。長引くデフレ経済、相次ぐ自然災害、原発事故。不安と緊張のつきまとう立冬の空が平成という時代のイメージにはぴったりかもしれない。「五ケ月の胎児のすがた月清し」〜龍子さんの句。身内のおめでたが近づいている。今では胎児の画像を見ることは容易になった。それはまるで月のような画像だったのかもしれない。この句は「月清し」が利いている。作者は9月の句会で「秋うらら嬰授かりし報せ受く」も詠んでいる。ところで、赤ちゃんは平成の最後、新しい時代のどちらに誕生するのかな。(潔)
 [ 2018/11/11 10:15 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:風の会(平成30年11月3日)

谷津バラ園、谷津干潟吟行(句会場:「日本海庄や」船橋南口店)

高点2句
秋澄むや陰影もたぬ裸婦の像    森永 則子
秋風や鳥に嫌はる杭ひとつ     岡崎由美子

大鉢のベルサイユの薔薇枯れ果つる 沢渡  梢
塩害の樹々の合間を秋の蝶     山本  潔
日輪へ光を返す残り鷺       針谷 栄子
立ち尽くす鷺晩秋の潮満ち来    森永 則子
晩秋の水面に映る鷺の影      廣田 健二
文化の日新種の薔薇の香の強く   岡戸 良一
白昼の翅の重たき秋の蝶      岡崎由美子

(清記順)

【吟行報告】秋晴れとなった文化の日。お昼前に京成線谷津駅に集合。幹事さんが人気店の串団子を購入し、商店街を抜けて谷津バラ園へ。10月の台風24号による塩害で、バラ園前の銀杏は無惨にも海側の葉が枯れていた。「塩害の樹々の合間を秋の蝶」(潔)。季節は秋と冬の境目。「大鉢のベルサイユの薔薇枯れ果つる」(梢)、「文化の日新種の薔薇の香の強く」(良一)。薔薇は夏の季語だが、今の季感を大事に、工夫しながら詠む。「秋澄むや陰影もたぬ裸婦の像」(則子)は園内の白い塑造を観察して詠んだ一句。「陰影もたぬ」という把握がお見事。干潟では白鷺や青鷺、鴫、鴨たちが羽を休めている。我々もお団子をいただいて一休み。それぞれの目に映る様子を言葉にしていく。「日輪へ光を返す残り鷺」(栄子)、「立ち尽くす鷺晩秋の潮満ち来」(則子)、「晩秋の水面に映る鷺の影」(健二)。鳥を詠む句が多くなる中、異彩を放ったのは次の一句。「秋風や鳥に嫌はる杭ひとつ」(由美子)。鳥ではなく、杭に焦点を当てた。季語の斡旋も絶妙。「白昼の翅の重たき秋の蝶」(由美子)も同じ作者。遊歩道の垣根の上に羽を広げていた大きな黒揚羽が、重そうに舞い上がったのを見逃さなかった。(潔)
 [ 2018/11/04 16:34 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:東陽(平成30年10月27日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「紅葉」「色」

高点3句
命尽くる刻は測れず秋深む     堤  靖子
うろこ雲だんだん貝になるわたし  山本  潔
権現様のお愛想ほどの初紅葉    浅野 照子

菊膾地酒は舌に響きけり      飯田 誠子
さわやかに一輪車漕ぐ膝頭     沢渡  梢
鬼門除けの札は金色空高し     堤  靖子
つまべにの種を弾きて人見知り   新井 洋子
水草の紅葉はじまる瀬音かな    長澤 充子
短冊にしるす一句や十三夜     岡戸 良一
削られし山の叫びか櫨紅葉     野村えつ子
竹林を抜けて直路や秋燕忌     山本  潔
山裾へ晩稲ひろごる黄の世界    浅野 照子
大岩の迫る神橋初紅葉       貝塚 光子
恙なき雁の渡りを祈りけり     斎田 文子
十月や身の影を鋤く畑仕事     安住 正子

(清記順)

一口鑑賞命尽くる刻は測れず秋深む」〜靖子さんの句。秋も深まる頃になると、誰しも寂寥の気持ちが強くなる。しかも辺りはしーんと静まりかえっている。そんなときに、作者はふと呟いたのである。「命はいつ尽きるか測れない」と。誰しも感じることを素直に詠んで共感を得た一句。「権現様のお愛想ほどの初紅葉」〜照子さんの句。日光の旅から帰ってきたばかりという。旅吟が早速、席題「紅葉」に結び付いた。日光東照宮のまだ色づき始めたばかりの紅葉を「権現様のお愛想ほど」と叙したところが何ともユニーク。お愛想ほどであっても、今年の紅葉と出会えたことへの喜びが伝わってくる。この句の「権現様」は徳川家康の尊称。(潔)
 [ 2018/10/28 10:08 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:すみだ(平成30年10月23日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点2句
余生なほ炎ゆるいろ欲し鶏頭花   加藤 弥子
空よりも地のぬくもりに秋の蝶   岡崎由美子

色鳥やはじめ冷たき木椅子の背   加藤 弥子
十三夜庭にをさなの忘れ物     岡崎由美子
跡地いま自然に帰り草の絮     岡戸 良一
木道に弾む靴音初紅葉       長澤 充子
治癒を待つ厨の隅の新走り     貝塚 光子
母何時か子の名を忘れ赤とんぼ   工藤 綾子
剥落の萬年橋や秋暮るる      高橋 郁子
町外れの無人交番神無月      桑原さかえ

(清記順)

一口鑑賞余生なほ炎ゆるいろ欲し鶏頭花」〜弥子さんの句。深紅の鶏頭花はまさに燃え上がる炎の色。余生と呼ぶべき年齢に入っていることを自覚しながら、なおも「炎ゆるいろ欲し」とは、生への執着を詠んだ句と言っていい。一日一日を大事に生きている作者だからこそ、鶏頭花の色が切ないくらいに愛おしいのではないか。そんな気持ちを素直に詠める俳句っていいなぁと思う。「空よりも地のぬくもりに秋の蝶」〜由美子さんの句。花壇か畑の土の上だろうか。秋の蝶がじっと止まっている。何だか心地良さそうな蝶の様子を眺めていると、地の温もりが感じられてくるようだ。うっかり空へ舞い上がれば、そこはもう冬の空気かもしれない。もうしばらくの間、秋の蝶でいたいと思っているのは作者自身に違いない。(潔)
 [ 2018/10/26 22:25 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:若草(平成30年10月13日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「秋燈・秋灯」、席題「街」「音」

高点3句
人はみな灯に戻りゆく暮の秋    加藤 弥子
秋灯シフォンケーキの月の色    坪井 信子
美濃紙の墨を吸ひあぐ秋灯下    針谷 栄子

木々を打つ私雨も秋の音      山本  潔
「草花を詠むといいよね」庭は秋  石田 政江
秋の蜘蛛築山うらに通せん坊    森永 則子
ハロウィンの魔女東京の街を行く  岡戸 良一
底紅の紅にとどかぬ街の音     坪井 信子
瓢箪や娘は母に物申す       廣田 健二
秋霖やアズナブールの黒いシャツ  沢渡  梢
横文字の読めぬ墓碑銘こぼれ萩   飯田 誠子
立飲みのネクタイ緩め秋ともし   新井 洋子
パソコンの値百円いわし雲     松本ゆうき
赤とんぼ肩に手に君は何者     針谷 栄子

(清記順)

一口鑑賞美濃紙の墨を吸ひあぐ秋灯下」〜栄子さんの句。兼題「秋灯」に対し、美濃紙という素材を持ってきたところが素晴らしい。美濃紙は岐阜県で奈良時代の頃から製造されている。伝統工芸品として知られ、その技法は重要無形文化財にも指定されている。澄みきった秋の灯に照らされた和紙に、たっぷりと墨を含んだ筆を置いた瞬間に墨が吸い込まれていく。和紙の質感とともに、墨の匂いもしてくるようだ。趣のある一句。「底紅の紅にとどかぬ街の音」〜信子さんの句。「底紅」は木槿のこと。赤紫や白などの花を咲かせる。中でも真っ白な花の底の部分が赤いものを底紅と呼ぶ。街から離れたお寺の境内や小さな公園、あるいは路地裏に咲く底紅だろうか。作者は赤い部分に視線を合わせながら、静寂の中にいる。席題「街」「音」の両方の文字を巧みに詠み込んだ。(潔)
 [ 2018/10/14 10:09 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
プロフィール

花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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