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花暦句会報:すみだ(平成31年1月23日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点2句
楪や大内山に日の光      貝塚 光子
護摩焚きの読経響ける寒御堂  長澤 充子

仏の座薬鉢のこる極楽寺    高橋 郁子
連なりて連なりて山春を待つ  工藤 綾子
初東雲に今年の決意確かめり  桑原さかえ
お茶室や一輪挿しの寒椿    大浦 弘子
髪染めてひとり気儘に女正月  長澤 充子
好好爺の掌の餌に冬雀     貝塚 光子
湖見えて一期一会の寒蜆    岡戸 良一

(清記順)

一口鑑賞楪や大内山に日の光」~光子さんの句。「楪(ゆづりは)」は新年の季語。常緑高木で、長い楕円型の葉は表面に光沢がある。初夏に新しい葉が出るが、古い葉は新しい葉が生長するまで残り、やがて世代を譲るかのように落ちる。縁起物として正月飾りに用いられてきた。中七の「大内山」は皇居のこと。今年5月に行われる皇位継承を念頭に置き、「楪」との取り合わせに感慨が込もる。平成最後の一般参賀は明るい日の光に包まれていた。「仏の座薬鉢のこる極楽寺」~郁子さんの句。「仏の座」は春の七草の一つ。新年に鎌倉の極楽寺へお参りに行ったのだろう。ここは山門を入って参道を進むと、本堂手前の右手に薬鉢と茶臼が置かれている。そのままの景を詠んだだけなのだが、極楽寺という場所柄もあり、「薬鉢」をめぐる物語を連想させる。(潔)
 [ 2019/01/26 09:22 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:若草(平成31年1月12日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「餅花、繭玉」、席題「熱」

高点3句
風のほかまとふものなし枯芙蓉   坪井 信子
餅花や鴨居に父と母の額      新井 洋子
冬ぬくし鳩の形のビスケット    飯田 誠子

スクラムの底よりラガー等の熱気  坪井 信子
平成の次も幸あれ餅の花      山本  潔
「タマ」といふ猫の卒塔婆冬の菊  廣田 健二
ビューティーサロン鏡の中の冬薔薇 石田 政江
気掛かりな一言添へて賀状来る   沢渡  梢
熱帯びる女ばかりの福笑      針谷 栄子
冬籠広き世間を狭くして      新井 洋子
一期一会寒雀とていとほしや    加藤 弥子
餅花やどこか寂しき母の里     松本ゆうき
餅花の先の小判や風の音      飯田 誠子
餅花や女系家族の母の郷      岡戸 良一

(清記順)

一口鑑賞餅花や鴨居に父と母の額」〜洋子さんの句。「餅花」は小正月の飾り物。柳や榎などの枝に小さくちぎった餅を花のようにつけて高いところに飾り、豊作を祈る。この句では、餅花を飾った近くの鴨居に父と母の額が掛かっているのである。ほのぼのとした家族を思わせる光景だ。「父と母の額」と言っただけで余計な説明をしていないところがいい。読み手に想像させるのも俳句。洋風化で鴨居のない家も多くなったが、最近は餅の花をあしらった素敵なアレンジメントも売っている。「『タマ』といふ猫の卒塔婆冬の菊」〜健二さんの句。墨田区両国の回向院(えこういん)を吟行しての作。ここには人に限らず、「全ての生あるものを供養する」という理念から、犬猫や小鳥などの供養塔がある。卒塔婆に記された数々のペットの名前の中でも「タマ」は猫の代表格。作者にも思い入れのある名前なのだろう。供養塔には菊をはじめたくさんの花が供えられていたはずだ。(潔)
 [ 2019/01/13 10:21 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:連雀(平成31年1月9日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「正月」

高点1句
数の子や倅もやつと子の親に   中島 節子

冬鴎群れて水面を占領す     田崎 悦子
初笑素人寄席の旦那ぶり     向田 紀子
相寄りて小さき幸や福寿草    加藤 弥子
工事場の裸電球頬凍てる     中島 節子
初御空女手に打つ大太鼓     春川 園子
元号のなき日めくりや屠蘇祝ふ  飯田 誠子
冬麗やお別れ会は聖歌にて    束田 央枝
膳のもの並べてよりの初鏡    坪井 信子
波頭低くくずれて野水仙     松成 英子

(清記順)

一口鑑賞数の子や倅もやつと子の親に」〜節子さんの句。お孫さんが生まれた(生まれる)喜びを詠んでいるのだが、それをストレートに言わず、「倅」を主人公にしたところが微笑ましい。季語は「数の子」。お節料理の定番メニューの一つで、子孫繁栄を祈る意味が込められている。新年のめでたさに身内の喜びごとを巧みに重ね合わせた一句。前回の連雀で取り上げた「寄鍋や独り身とほす娘来て」も節子さんの句。いずれも子を思う母親の愛情がにじみ出ている。「初御空女手に打つ大太鼓」〜園子さんの句。初詣に行った際の光景だろうか。淑気みなぎる元日の空の下に、女性が大太鼓を叩く映像がくっきりと立ち上がる。政府が女性活躍の旗を振り始めてから5年余り。なかなか思うようには進まない現実もあるが、新年の厳かな行事の一場面に女性が立っている姿が清々しい。間もなく平成が終わる。女性の大太鼓は新しい時代への希望を打ち鳴らしている。(潔)
 [ 2019/01/12 09:57 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:すみだ(平成30年12月19日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点2句
短日の交番の灯に老いの背ナ    岡崎由美子
茶を燻す香炉を卓に一茶の忌    岡戸 良一

大根煮る優しい妻の振りをして   岡崎由美子
電飾の伽の園に着ぶくれて     貝塚 光子
老い猫に問わず語りの日向ぼこ   長澤 充子
悴める手が悴める手をさする    工藤 綾子
年の瀬に追われ追われて動く足   大浦 弘子
塩害の参道杉の冬ざるる      桑原さかえ
義賊の墓銀杏落葉の中にあり    高橋 郁子
忘年の唄は昭和をかけ巡る     岡戸 良一
やはらかき人波にゐてクリスマス  加藤 弥子

(清記順)

一口鑑賞やはらかき人波にゐてクリスマス」~弥子さんの句。イルミネーションに彩られ、ジングルベルが流れているような場所だろうか。歳末のせわしない人混みとは異なり、人々はゆっくり歩いている。家族や友人、ひいては世界の平安を祈りながら…。それを作者の感性は「やはらかき人波」と叙したのである。クリスマスは、こうした異空間を作り出す魅力に満ちあふれている。メリー・クリスマス!
義賊の墓銀杏落葉の中にあり」〜郁子さんの句。「義賊」と言えば石川五右衛門や鼠小僧、裏宿七兵衛などが有名だ。もちろん無名でもいい。格差が拡大する世知辛い世の中にあって、銀杏落葉に染まる義賊の墓は心に迫るものがある。クリスマスとは対照的なシーンを捉えた一句。(潔)
 [ 2018/12/22 10:12 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:東陽(平成30年12月16日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「極月」「響」

高点5句
叶ふなら上手く逝きたし冬安吾    沢渡  梢
電車待つ数分間の日向ぼこ      山本  潔
終活を心の隅に年用意        岡戸 良一
煮凝りとなるも透明なる余生     浅野 照子
着ぶくれて沖縄の苦を眺む俺     松本ゆうき

聖堂に響く讃美歌室の花       沢渡  梢
響くほど鼻すすりけり冬の朝     松本ゆうき
思ひ出は両手に余り返り花      堤  靖子
心身を恃む晩年冬至風呂       岡戸 良一
良く通る声の保母さん鵙日和     斎田 文子
タクシーの尾灯遠のく宵時雨     長澤 充子
クリスマスやつぱり東京タワーが好き 山本  潔
雪山をあとに列車の高響き      浅野 照子
伐採の音響きたる枯木山       安住 正子
麦の芽に湖の光や地の力       貝塚 光子
長葱さげてマーチの響く駅に立つ   飯田 誠子

(清記順)

一口鑑賞煮凝りとなるも透明なる余生」〜照子さんの句。「煮凝り」が冬の季語。カレイ、ヒラメ、アンコウなどゼラチン質の多い魚などを煮て、煮汁ごとゼリー状に固めた料理。半透明なプルプルとした物体の中に素材の旨味がぎゅっと詰まっている。この句は、自分自身をそんな煮凝りに見立てたところが何ともユニークだ。「煮凝りになったけれど、透明で偽りのない余生を送っていることだなあ」。作者の達観した心境が羨ましい。「長葱さげてマーチの響く駅に立つ」〜誠子さんの句。買い物袋からはみ出している長葱に生活感が溢れる一方で、マーチの響く駅という場面設定によって、どことなく非日常的なシーンが思い浮かぶ。ただ、長葱を提げているだけなのにえも言われぬおかしみが感じられる。席題「響」で詠まれた不思議な味わいのある一句。(潔)
 [ 2018/12/20 22:41 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:若草(平成30年12月8日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「秩父夜祭」、席題「枯」

高点3句
みそ汁に残る貝砂開戦日      針谷 栄子
水鳥の眠りの深きレノンの忌    山本  潔
秩父夜祭太古の海の怒涛音     岡戸 良一

空つ風農家の庭に干す達磨     岡戸 良一
猪汁の露店に匂ふ秩父かな     新井 洋子
ふるさとに常の顔あり秩父夜祭   山本  潔
赫々と夕日太れる枯れ蓮田     加藤 弥子
火を上げよ兜太の山河秩父祭    針谷 栄子
猫三度パン盗みゆく漱石忌     松本ゆうき
後悔も欲も失せしよ枯芙蓉     坪井 信子
干芋の側とほるたびつまみ食ひ   石田 政江
黄落や亡父似の人を振り返り    飯田 誠子
ゆるゆると五体ほどける日向ぼこ  沢渡  梢

(清記順)

一口鑑賞みそ汁に残る貝砂開戦日」〜栄子さんの句。昭和16年12月8日は太平洋戦争開戦の日。日本の不幸な歴史が始まった日として多くの人々の心に刻まれている。しかし、戦後73年が過ぎて「開戦日」がピンとこない若者も少なくないという。この句は「みそ汁に残る貝砂」が口に入ったときのジョリジョリとした何とも嫌な感じと「開戦日」を取り合わせたところが絶妙だ。決して忘れてはならない日を詠んで伝えることができるのも、俳句という最短詩型の優れたところ。「秩父夜祭太古の海の怒涛音」〜良一さんの句。夜祭見物には一度も行かれたことはないというが、太古の昔は海の底にあった秩父の歴史を踏まえてまとめた一句。サンゴ礁に覆われた海底の山が隆起して現れたのが武甲山であり、秩父の象徴でもある。夜祭は養蚕が盛んだった頃の織物市に由来し、武甲山信仰などと結び付いて300年以上の伝統を誇る。12月3日夜、6基の山車が勇壮な屋台囃子を奏しながら、順番に最大傾斜角25度の団子坂を登るシーンは圧巻。それはまさに「太古の海の怒涛音」と言っていい。(潔)
 [ 2018/12/09 11:23 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:連雀(平成30年12月5日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「鍋」

高点2句
豆腐屋の笊のあめ色十二月     加藤 弥子
寄鍋や独り身とほす娘来て     中島 節子

昼点す園の茶室や返り花      中島 節子
焼芋の英字新聞拾い読み      飯田 誠子
白鳥の飛来安堵と文とどく     横山 靖子
愛されて雪吊といふ枷の中     加藤 弥子
しのび寄る老いを諾ふ冬桜     春川 園子
この道は亡夫と歩みし帰り花    束田 央枝
冬桜ブロック塀を楯にして     田村 君枝
手仕事の畳屋いまも冬ぬくし    松成 英子
寄鍋や夫も故郷なく恙なく     向田 紀子
大方は地に裏返り朴落葉      田崎 悦子
目も耳も歯も衰へて冬のヨガ    進藤 龍子
牛鍋を囲む目と目と目と箸と    坪井 信子

(清記順)

一口鑑賞寄鍋や独り身とほす娘来て」〜節子さんの句。久しぶりに帰ってきた娘さんと寄鍋を囲んでいる。世間話をしたり、仕事の話を聞いたり、楽しい家族団欒のひとときである。しかし、母親としては娘さんが独身でいるのが気になって仕方がないのだろう。もはや「誰かいい人は?」などとは聞かないが、娘さんの幸せを願う親心はいくつになって変わらない。今、その中心にあるのが寄鍋なのである。「大方は地に裏返り朴落葉」〜悦子さんの句。朴はモクレン科の高木。葉は大きな楕円型で、長さは30センチ以上もある。存在感があるから、見ればすぐに分かる。作者は朴落葉を観察し、その大方は裏返っていると感じたのである。葉の表が薄茶色なのに対し、裏側は銀色を帯びている。裏返っている方が目立つから、そう感じたのかもしれない。写生を大事にしていることがうかがえる一句。(潔)
 [ 2018/12/09 09:24 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:すみだ(平成30年11月28日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点3句
旅の駅出づれば湖国冬の虹     貝塚 光子
武蔵野の雑貨屋通り冬ぬくし    岡崎由美子
茶の花や文士旧居の広き縁     岡戸 良一

冬晴や池面に映る天守閣      貝塚 光子
木枯しに舞ふ銀杏葉の床運動    大浦 弘子
風邪ひきて心細さの粥すする    桑原さかえ
バス停へ歩幅小さくなりて冬    岡崎由美子
綿虫やふつと昔の子守歌      加藤 弥子
大熊手上野駅舎に掲げらる     長澤 充子
鰰や雲とつながる能登の海     岡田須賀子
洗濯挟み音立て割れる寒の入り   工藤 綾子
甲斐の日を余さず抱く柿すだれ   高橋 郁子
散りしきる木の葉仄かに香る径   岡戸 良一

(清記順)

一口鑑賞茶の花や文士旧居の広き縁」〜良一さんの句。記念館として公開されているような文豪の旧居を訪れたのだろう。よく手入れされた庭には茶の木が小さな白い花をつけている。それだけでも穏やかな冬日和の景が目に浮かぶのだが、作者はさらに縁側に心を留めた。その広さがそのまま作家の人柄や作品の奥深さに重なり合ったのかもしれない。静かな味わいを感じさせる一句。「洗濯挟み音立て割れる寒の入り」〜綾子さんの句。洗濯挟みはほとんどプラスチック製だ。ベランダの物干しで風雨にさらされたり、日差しを受けたりしているうちに劣化し、ある日突然、パキンと割れてしまう。寒いときの方が割れやすいと思うのは気のせいだろうか。「寒の入り」が効いている。日常の中のささやかな出来事を巧みに詠んだ。「木枯しに舞ふ銀杏葉の床運動」〜弘子さんは初参加。「床運動」は体操競技の一つ。作者は木枯らしに吹かれて舞う銀杏の葉がまるで体操選手のようだと見て取った。ユニークな捉え方を素直に表現した。床をはみ出す葉も多かったのでは…。(潔)
 [ 2018/12/01 10:33 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:東陽(平成30年11月23日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「赤」「勤労感謝の日」

高点5句
悟りきる姿となりて枯蓮      野村えつ子
裸灯を揺らして下ろす大熊手    野村えつ子
緋の色の舞妓の蹴出し小春空    長澤 充子
山茶花の昨日の色を掃きにけり   安住 正子
しりとりでバス待つ父と子に小春  沢渡  梢

初霜や産みたて卵手にぬくき    安住 正子
赤帯の老師の眼冬稽古       岡戸 良一
仔犬の耳紅く透けをり小六月    浅野 照子
温湿布目蓋に勤労感謝の日     沢渡  梢
冬の日を撥ね谷川の万華鏡     新井 洋子
心地好き声耳元に帰り花      長澤 充子
芭蕉忌やはちきれさうな旅鞄    野村えつ子
絵手紙を描き勤労感謝の日     山本  潔

(清記順)

一口鑑賞緋の色の舞妓の蹴出し小春空」〜充子さんの句。作者は最近、京都旅行をしてきた。席題「赤」で咄嗟に舞妓さんの姿を思い浮かべたのだろう。「蹴出し」は、着物の裾を上げて歩くとき腰巻が露わになるのを避けるために重ね着る。小春空の下、舞妓さんが橋を渡る姿を目に浮かべてみよう。緋色の「蹴出し」にリアリズムがにじみ出ている。「温湿布目蓋に勤労感謝の日」〜梢さんの句。あと半年も経たないうちに平成の世が終わる。現代における労働の変化を考えたときに、これほど目を酷使する時代はかつてなかったのではないか。パソコンやスマートフォンの普及で我々は目を酷使している。今日において「勤労感謝」とは、突き詰めれば目を労わることに他ならない。揚出句の「温湿布目蓋に」は、まさにそんな一面を言い当てている。次の時代もこの流れは変わりそうにないが…。(潔)
 [ 2018/11/24 09:59 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)

花暦句会報:若草(平成30年11月10日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「花八手」、席題「温」

高点5句
いい人の顔していつも温め酒    山本  潔
鮟鱇のすべてを愛でて吊るし切る  神戸 康夫
いく重にも竿ふやしつつ柿つるす  石田 政江
蹲踞の水音和らぐ石蕗日和     新井 洋子
丸刈りの男の子集まれ花八手    坪井 信子

とろろ汁山ひとつづつ暮れてゆき  加藤 弥子
ビル壁は冬夕焼のスクリーン    坪井 信子
出で立ちのいつもスマート焼秋刀魚 神戸 康夫
白薔薇に仄かな紅や冬温し     岡戸 良一
みちのくの空は今年も柿たわわ   廣田 健二
温泉に猿の親子や雪催       新井 洋子
母恋し古里恋しおけさ柿      石田 政江
霜月の小便小僧に朝が来る     森永 則子
居酒屋の暖簾めくれて神無月    山本  潔
通りまで屋台賑ふ三の酉      沢渡  梢
柵固き魚市場跡花八ツ手      飯田 誠子
裏庭に井戸ある記憶花八手     針谷 栄子

(清記順)

一口鑑賞鮟鱇のすべてを愛でて吊るし切る」〜康夫さんの句。ご存じ、鮟鱇は深海魚。頭が大きく押しつぶされたような形をしており、口が広い。身が柔らかく、俎板でさばくのは難しい。調理の際は鉤に口を掛けて吊るし切りにする。尾鰭、肝、胃、卵巣、皮、えら、身のどれも鍋にすると美味しい。作者は「鮟鱇のすべてを愛でて」と言うことにより、この独特の生き物への敬意を表している。吊るし切りを詠んだ句といえば加藤楸邨の「鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる」がすぐ頭に浮かぶ。「いく重にも竿ふやしつつ柿つるす」〜政江さんの句。自ら吊し柿を作っている。渋柿の蔕を残して皮をむき、縄に吊して干していく。なかなか根気のいる作業だ。それでも「いく重にも竿ふやしつつ」という措辞に作り手の喜びが感じられる。柿もたくさん獲れたのだろう。軒下に干柿が連なる景は風情がある。むいた皮も干して糠床に混ぜれば、漬物がほのかに甘くなるという。(潔)
 [ 2018/11/11 14:07 ]  俳句 | TB(0) | コメント(0)
プロフィール

花暦

Author:花暦
『花暦』俳句会のWeb版。
師系・舘岡沙緻、富安風生、岸風三樓。
「人と自然の内に有季定型、写生第一、個性を詠う」をモットーに活動しています。

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