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艸句会報:かつしか(令和3年1月24日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「鍋」一切

高点2句
春を待つさなぎのやうに脱ぐ下着   山田 有子
絵羽織の仕付け糸引く初鏡      近藤 文子

卒寿まであとふたとせや実千両    伊藤 けい
梅香る三度仰ぎて女坂        中山 光代
書初や思ひを込めて健康と      五十嵐愛子
梅花人参散らす大皿大家族      新井 洋子
我が病ゆるゆる癒える冬木の芽    平川 武子
風花や雑踏をゆく真知子巻き     霜田美智子
寒月を独り占めする仕舞風呂     近藤 文子
冬の雨二人の椅子はアールデコ    山田 有子
擂鉢の音や三日のとろろ汁      小野寺 翠
おでん鍋あとから一人加はりぬ    片岡このみ
「俺がやる」夫の言ひ出す鍋奉行   三尾 宣子
猪鍋や鬼の小言を聞きながら     山本  潔
清滝や剣のごとき氷柱下げ      佐治 彰子
肩肘を張らず寄り添ふおでん酒    笛木千恵子
シクラメン今年も選ぶ母の赤     西村 文華
初稽古要の固い舞扇         千葉 静江
深川へ相撲帰りのさくら鍋      新井 紀夫
湯豆腐の湯気にほどける心地して   高橋美智子

(清記順)

【一口鑑賞】絵羽織の仕付け糸引く初鏡」文子さんの句。近年は正月に着物姿の人を見る機会も少なくなった。とりわけ今年はコロナ下にあって年始参りどころではなかった。この句は思い出の中の1シーンだろう。年が改まり、絵羽織の仕付け糸を取り外したことに焦点を当ててシンプルに詠んだ。「初鏡」の前で気持ちも引き締まる。「我が病ゆるゆる癒える冬木の芽」武子さんの句。療養中で欠席投句の作者。春には句会に出ることを楽しみにしながら、家で句作に励んでいる。「冬木の芽」に励まされ、快方に向かっているようだ。全快を祈ります。
風花や雑踏をゆく真知子巻き」霜田美智子さんの句。「真知子巻き」は昭和28年に大ヒットした映画「君の名は」のヒロインの名にちなんだファッション。ショールを頭から首の回りに巻いた姿は、映画を知らない世代でも目に浮かぶ。風花の舞う雑踏なら、今も真知子巻きは目を引きそうだ。「肩肘を張らず寄り添ふおでん酒」千恵子さんの句。本来、おでん酒とはそんなふうにして飲むから楽しい。ソーシャルディスタンスの世の中ではそうもいかなくなったが…。
シクラメン今年も選ぶ母の赤」文華さんの句。シクラメンと言えば、赤、白、ピンクがすぐに思い浮かぶ。いざ買おうとすると、同じ色の中でも微妙に明るさや模様が異なるので迷う。この句は「母の赤」がポイント。お母さんの好みの赤を熟知している作者の優しさが表れている。(潔)

艸句会報:若草(令和3年1月)

若草通信句会
兼題「信」

高点1句
毛糸編む編めば睡魔の来てすわる   飯田 誠子

初釣りの魚信定かに竿の先      岡戸 林風
寒の雨路面に滲む赤信号       沢渡  梢
羽子高く突いて未来を見に行かむ   山本  潔
朝の日のとびつく信濃冬林檎     飯田 誠子
降りしきる雪の隠せる信号機     安住 正子
白障子碁笥の木目のきはやかに    新井 洋子
本当は森で眠つてゐたき熊      市原 久義
病よき夫と炬燵に猪口ふたつ     石田 政江
息詰めて雪の深さを信じけり     坪井 信子
言ふならば小原庄助三が日      松本ゆうき
神在す立山三山初景色        吉﨑 陽子
手締めする事もかなはず去年今年   新井 紀夫
耳鳴りの幾万匹の寒夜かな      針谷 栄子

(清記順)

【一口鑑賞】1月7日に緊急事態宣言が再発令されたことに伴い、9日に予定していた若草句会はF A Xによる通信句会となった。そんな中で最も人気を集めたのが誠子さんの句。「毛糸編む編めば睡魔の来てすわる」。冬の季語「毛糸編む」を上五に置きながら、居眠りをしている作者自身をコミカルに詠んでいる。中七、下五の畳みかけるような措辞が心地よく、ユーモアにあふれている。
 「本当は森で眠つてゐたき熊」久義さんの句。「熊」が冬の季語。冬は山奥の洞穴に籠るが、昨年後半から人里で熊の目撃情報が相次いでいる。団栗が不作で餌を求めてやってくるらしい。また、コロナ禍の影響で山歩きをする人が増えて熊に襲われるケースもあるという。この句は、そんな事情を踏まえているのだろう。地球の気候変動は動植物にも変化をもたらす。熊への思いやりを感じさせる一句。
 「神在す立山三山初景色」陽子さんの句。「立山」は北アルプス北部の山の総称で、雄山(おやま)、大汝山(おおなんじやま)、富士ノ折立(ふじのおりたて)からなる。これに南の浄土山、北の別山(べっさん)を合わせたのが「立山三山」。北陸の広大な山岳地帯は「神在す」領域と言っていい。富山県に暮らす作者。ここの初景色にコロナ禍の終息を祈ったに違いない。(潔)

艸句会報:連雀(令和3年1月6日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「日」

高点1句
ゆるゆると老いて一人の寝正月    坪井 信子

東京のまさをな空の三が日      飯田 誠子
凍空や音したたかに基地のヘリ    束田 央枝
牛日のミルクにひたす胡桃パン    山本  潔
凍星のひとつ瞬く小窓かな      坪井 信子
俳諧は生き甲斐なりし初句会     安住 正子
寒鴉一声夕日落ちにけり       松成 英子
来し方を想ふ窓辺や冬夕焼      春川 園子
あれこれとレシピ片手に小晦日    中島 節子

 明恵上人に
あかあかやあかあかあかや初日の出  松本ゆうき
裏道の古き自販機冬の草       岡崎由美子
炎立つ富士の稜線寒夕焼       向田 紀子

 サントリーホール
マスクして歌う第九を聴くマスク   横山 靖子
(清記順)

 【一口鑑賞】昨年後半からの新型コロナウイルス第3波による感染拡大が止まらない中、この日が初句会となった。「ゆるゆると老いて一人の寝正月」信子さんの句。昨年夏にご主人を亡くされた作者。外出自粛も加わり、三が日はほとんど一人で過ごしたのだろう。寂しさを感じながらも「寝正月」というささやかな時が自分自身を見つめ直す機会になったのかもしれない。「ゆるゆると老いて」は決して弱音を吐くまいとする作者の強がりのように思えてくる。
 「寒鴉一声夕日落ちにけり」英子さんの句。冬は夕暮れどきでも烏をよく見かける。フェンスや塀の上などでじっと人間をにらんでいるのは、食べ物を求めているからだろう。そんな烏に作者は親しみを感じて近づこうとしたのかもしれない。しかし、その一瞬の動きの中で烏は一声を放って飛び去り、あっという間に日も暮れたのである。寒烏と人間の距離を無駄なく描いた一句。(潔)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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