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艸句会報:船橋(令和元年12月15日)

船橋句会(船橋市勤労市民センター)

高点2句
長寿翁の手形にもふれ冬ぬくし    岡戸 林風
着膨れて海苔屋の海苔の握り飯    山本  潔

落葉踏む仔犬のリード弛ませて    長澤 充子
寒林の風をものともせず大樹     山本  潔
侘助や夫との刻の増ゆる日々     針谷 栄子
市の立つ大神宮の里神楽       岡戸 林風
女湯の四方山話柚子浮ぶ       川原 美春
座布団の隅に積まれし冬座敷     飯塚 とよ
行く年の水子地蔵に笑みの顔     小杉 邦男
枝先の甘き蜜柑は風のもの      並木 幸子
室の花抑揚のなき医師の声      岡崎由美子

(清記順)

一口鑑賞長寿翁の手形にもふれ冬ぬくし」林風さんの句。この日、新たに船橋句会が発足。句会前に数名で船橋大神宮や市内を吟行した。市街地を流れる川には13の橋がかかり、それぞれの欄干にレリーフが設置されている。海老川橋は「長寿の橋」とも呼ばれ、120歳まで生きたとされる泉重千代さんの手形があった。作者はその手形に触れて長寿を祈ったのだろうか。寒さを忘れるひととき。「落葉踏む仔犬のリード弛ませて」充子さんの句。落葉道の散歩。リードの弛みが飼い主と犬との信頼関係を物語っている。「女湯の四方山話柚子浮ぶ」美春さんの句。女同士の四方山話に耳を傾けながら入る柚子湯。ぷかぷか浮かぶ柚子が健康的だ。(潔)

艸句会報:若草(令和元年12月14日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「落葉」、席題「数」

高点2句
晩年は吹雪く大樹の洞となる     野崎真理子
冬耕や地球の手入れ怠らず      新井 洋子

吹き上ぐるビルの五階の落葉かな   飯田 誠子
人住まぬ家も枯れゆくものの中    針谷 栄子
落葉焚生木の枝の火掻き棒      市原 久義
エイリアンめき鮟鱇のたぶたぶと   新井 洋子
数へ日や鍋の取つ手の根下札     坪井 信子
山眠る一茶の生家ここにあり     石田 政江
駅の灯は父恋ひに似て日短か     野崎真理子
分数につまづく少年落葉掻      山本  潔
数へ日の駅員高き窓を拭く      安住 正子
忘れ得ぬあれこれ胸にレノンの忌   岡戸 良一
ふりむけば浮き雲一つ落葉山     加藤 弥子
その顔もおぼろ気なひと賀状書く   松本ゆうき
街路樹に絡む電飾レノンの忌     沢渡  梢

(清記順)

一口鑑賞冬耕や地球の手入れ怠らず」洋子さんの句。「地球の手入れ」とは随分大きく出たものだと思う。句会では、地球温暖化問題と結び付けて語る声もあったが、そもそも「冬耕」とは稲刈りが済んだ後の田畑の土壌改良。古来、農耕民族が続けてきた営みであり、温暖化とは直接関係ない。とはいえ、農地がどんどん減れば、やがて地球も痩せていく。「地球の手入れ」は一見大きく構えながら、身近な空間の一つひとつを大切にしたいという願いが込められているのではないか。「駅の灯は父恋ひに似て日短か」真理子さんの句。地方の小さな駅だろうか。冬の夕暮れ時、早々に点った駅舎の灯は、父を慕う気持ちとどこか似ている。郷愁を呼ぶ一句。作者はフランスでの生活が長い。この日はゲストとして初参加。高点句に「晩年は吹雪く大樹の洞となる」も入った。(潔)

艸句会報:連雀(令和元年12月4日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「靴下、ストッキング」

高点3句
ポケットの鍵も走れり十二月     束田 央枝
日向ぼつこ私の中の砂時計      横山 靖子
歩かねば歩けなくなる冬菫      春川 園子

鍋いつぱい古女房の根深汁      松成 英子
ペイペイで払ふ治療費冬うらら    向田 紀子
急ぎ書く喪中葉書や室の花      中島 節子
ポインセチア寝足りし嬰のひとりごと 加藤 弥子
枯れ切つて風の素通る蓮田かな    進藤 龍子
知らぬ間に歯周病とや冬菫      束田 央枝
冬夕焼だいだい色は神の色      松本ゆうき
戦場の廃墟のごとき蓮の骨      横山 靖子
弟逝く花石蕗の黄の眼に痛き     坪井 信子
靴下を継ぎし母恋ふ霜の夜      岡崎由美子
通院の足裏にやさし落葉踏む     春川 園子
姑御に夢で叱られ龍の玉       飯田 誠子

(清記順)

一口鑑賞日向ぼつこ私の中の砂時計」靖子さんの句。一読して「砂時計」が心の中で動き出す。もちろん「私の中の」だから、実体としての砂時計はどこにもない。作者は、冬日向の眩しさや温もりの中で砂時計をイメージしているのである。それ自体に特別な意味はないのだろう。俳句における詩とはこんな詠み方からも生まれる。上五は音数を考えれば「日向ぼこ」としたいところだが、字余りが読み手の心を誘い込む効果を生んでいる。「通院の足裏にやさし落葉踏む」園子さんの句。落葉の路を歩いての通院。病を抱える作者にとっては、落葉を踏む音や感触が心に響いて励まされる気持ちになったのだろう。高点句に入った「歩かねば歩けなくなる冬菫」では、病に負けまいとする園子さんの強い気持ちが表れている。(潔)

艸句会報:すみだ(令和元年11月27日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「鍋」

高点3句
茅門の屋根を彩る散もみじ       高橋 郁子
おでん屋台今日の疲れの大きな背    岡崎由美子
雪吊りに自ずと背筋伸ばしけり     岡戸 良一

風評など気にしませんと鮟鱇鍋     岡戸 良一
時雨るるや宮の土俵の徳俵       岡崎由美子
悪相の魚も加へて寄せ鍋に       工藤 綾子
河豚鍋や父の小言もうわの空      大浦 弘子
山時雨祖谷の吊橋傘すぼめ       貝塚 光子
枇杷の花ひとり暮しも身につきて    福岡 弘子
鍋焼うどんの鍋の年季も味の内     高橋 郁子
底冷えの軒行灯や妻籠宿        桑原さかえ
どこまでも健やかなひと石蕗の花    松本ゆうき

(清記順)

一口鑑賞おでん屋台今日の疲れの大きな背」由美子さんの句。おでんが美味しい季節になった。夕暮れどき、ふと通りかかった街角の屋台にはもう明かりが灯り、おでんから湯気が立ち込めている。風除けの透明なビニールシートはまだ半分ほど開き、客の後ろ姿もよく見える。作者は一人の客の「大きな背」に「今日の疲れ」を感じ取ったのだ。日常の中のよく目にする一コマを切り取った一句。「鍋焼うどんの鍋の年季も味の内」郁子さんの句。寒くなると必ず食べたくなるものの一つに鍋焼うどんがある。ぐつぐつ煮えた土鍋に大きめに切ったネギや椎茸、蒲鉾などとともに、生卵が落としてある。うどんは熱々。フーフー言いながら食べれば体の芯から温まる。作者は、そんな鍋焼うどんの使い込まれた土鍋に着目したのである。タレの焦げ跡がしみ込み、見た目にも風情がある。まさに「味の内」だ。(潔)

艸句会報:東陽(令和元年11月23日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「一葉忌」「手」

高点3句
針山にむかし黒髪一葉忌       野村えつ子
AIの世に追ひつけず大根切る     堤 やすこ
ひとつづつ山暮れてゆく木守柿    野村えつ子

物産展に干薇や一茶の忌       貝塚 光子
店番の小巾刺しをる一葉忌      飯田 誠子
一人では漕げぬシーソー息白し    中川 照子
句会へと急ぐしぐれの一葉忌     堤 やすこ
灯の消えてよりのやすらぎ菊人形   野村えつ子
冬銀河星のガイドのペンライト    岡崎由美子
秩父嶺の山容変はり落葉焚く     向田 紀子
菰巻や明日を信じて頑張るか     斎田 文子
革張りのメニュー帳古り散紅葉    長澤 充子
軍扇を手に山頂の冬将軍       岡戸 良一
校正のあの手この手や一葉忌     山本  潔
大榾のつつかれ元気とり戻す     安住 正子
釣書は手がき三つ折り冬うらら    羽生 隣安
書くほどのことあるやなし日記買ふ  松本ゆうき
AIの喋る勤労感謝の日        新井 洋子
(清記順)

一口鑑賞針山にむかし黒髪一葉忌」〜えつ子さんの句。「針山」は「針刺し」のこと。「針立て」「針坊」とも言う。手芸の縫針を刺しておくための台で、綿を詰めて作る。かつては針が錆びるのを防ぐため、髪の毛やゴマなど油分のあるものを詰めたという。中七の「むかし黒髪」はまさにそのことを言っている。素朴な日用品が「一葉忌」と響き合っている。この句は女性陣に圧倒的な共感を呼んだ。「一人では漕げぬシーソー息白し」〜照子さんの句。描かれているのはシーソーと白い息だけだが、自ずと公園や校庭の遊具の景が思い浮かぶ。遊び相手のいない子どもは一人でシーソーの前に佇んでいる。そんな子どものそこはかとない寂しさと、それを見つめる作者の優しい眼差しが感じられる一句。ひょっとすると、子どもの頃の作者自身かもしれない。(潔)

艸句会報:若草(令和元年11月9日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「立冬、冬に入る」、席題「豆」

高点3句
伝言を預かるやうに冬に入る     羽生 隣安
石榴裂けて明日への不安なくはなし  加藤 弥子
冬浅し耳朶に口笛ほどの風      坪井 信子

身の丈の幸を諾ひ納豆汁       安住 正子
千姫の眠る御廟や初紅葉       石田 政江
短日の地下街点す赤提灯       岡戸 良一
薄紅葉歩く速さの豆電車       新井 洋子
パンに塗るバターの固き今朝の冬   市原 久義
公園の寂しきところ石蕗の花     羽生 隣安
冬に入るアンモナイトと鮫の骨    山本  潔
この町の人にも慣れて烏瓜      坪井 信子
闇鍋に我が身の相も煮ゆるかな    飯田 誠子
落ちてより増す大きさの一葉かな   針谷 栄子
蓑虫や捨てきし夢の二つ三つ     加藤 弥子
仲直りすることもなく冬に入る    沢渡  梢
団栗や天文学者のポケットに     松本ゆうき

(清記順)

一口鑑賞伝言を預かるやうに冬に入る」〜隣安さんの句。暦の上では1年の中で最も厳しい季節の入口に当たるのが立冬だ。「冬に入る」「今朝の冬」などとも言う。東京は朝晩冷え込むようになったが、日中はさほどでもない。とはいえ、立冬と言われれば、そろそろ寒さへの準備をしなければと思う。「伝言を預かるやうに」とはまさにこんな感覚だろうか。寒さへ向かう人間心理を巧みに捉えた一句。「パンに塗るバターの固き今朝の冬」〜久義さんの句も立冬を迎えた感覚を上手く詠んでいる。パンにバターを塗るのは立冬の朝に限ったことではない。しかし立春、立夏、立秋とは異なり、冬の到来には緊張感が伴う。それが「パンに塗るバターの固き」なのである。(潔)

艸句会報:連雀(令和元年11月6日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「もつ煮」

高点3句
五十年添ひて夜寒のもつ煮込み    松成 英子
鐘一つ撞きて鎮まる伊予の秋     松本ゆうき
遊べとや墓石に飴と木の実独楽    岡崎由美子

山茶花よ母の守りし庭に咲け     松本ゆうき
白き花ばかり集めて秋の庭      横山 靖子
冬隣る七味きかせてもつ煮かな    中島 節子
凩の浅草六区もつ煮込み       岡崎由美子
茶の花や列の乱れぬ修行僧      春川 園子
夫を呼ぶ吾が声ときに鵙に似て    坪井 信子
ワイン抜く音の弾けて室の花     向田 紀子
カーブスへ老いてますます日短し   束田 央枝
色かえぬ松に日の差す即位礼     松成 英子
青あをと生ふ冬草の力欲し      進藤 龍子
花蓼やテラスに暇な椅子ひとつ    加藤 弥子
どの松も菰巻をして眠さうな     山本  潔

(清記順)

一口鑑賞「鐘一つ撞きて鎮まる伊予の秋」〜ゆうきさんの句。伊予は今の愛媛県。作者の故郷は宇和島。この句はお母様の一周忌で里帰りをした際に詠まれた。自分で撞いた鐘の音をじっと聴きながら、深まりゆく秋を感じているのである。旅吟としての味わいもあるが、それ以上に「鎮まる」という措辞に作者の心境が投影されているのではないか。母親との死別から1年。少しずつ冷静に受け入れられるようになった心持を感じさせる一句。「花蓼やテラスに暇な椅子ひとつ」〜弥子さんの句。テラスにぽつんと置かれた椅子が一脚。それを「暇な椅子」と擬人化したところに俳味がある。この句も自分自身を投影している。庭に咲いている蓼はタデ科の一年草。秋に咲くのは犬蓼(赤のまま)、花蓼、桜蓼など。穂いっぱいに淡紅や濃紅紫の粒のような花をつける。(潔)

艸句会報:東陽(令和元年10月26日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「木の実」「源」

高点2句
電線はみな自由席小鳥来る      安住 正子
木の実降る余生は日付なき旅路    羽生 隣安

ちちろ鳴く巨大草鞋の仁王門     長澤 充子
源流は多摩の奥とや柿熟るる     安住 正子
「光秀」の謎そのままに花桔梗    中川 照子
橋朽ちて色なき風の渡るのみ     小泉 裕子
手酌にも順序の在りてかまどうま   羽生 隣安
猫脚の椅子のサロンや秋深し     新井 洋子
撫牛の鈴新しく七五三        堤 やすこ
「母さん」と声にしてみる秋の雲   斎田 文子
井月の口ぐせ「千両」蕎麦の花    松本ゆうき
「ボレロ」聴きし心醒めゐる夜長かな 向田 紀子
大川を鈍色に変へ台風過       飯田 誠子
能登瓦月の名残を映しけり      岡戸 良一
子ひとりの回転木馬ねこじやらし   山本  潔

(清記順)

一口鑑賞電線はみな自由席小鳥来る」〜正子さんの句。圧倒的な人気を集めた。「電線に止まる鳥たちはみんな平等だよね」という感覚を「自由席」と表現したところにこの句の眼目があるのは明らかだ。鳥のことを言いながら、人間だって平等だという思いも込めているのではないか。「小鳥来る」は秋の季語で、鶫(つぐみ)、鶸(ひわ)、連雀(れんじゃく)、鶲(ひたき)などの小型の渡り鳥のこと。雀や鴉が電線に止まっている姿は日常的によく目にするが、渡り鳥を見分けるのはなかなか難しい。何でもよく見ている作者ならではの一句。「『ボレロ』聴きし心醒めゐる夜長かな」〜紀子さんの句。「ボレロ」は1928年にフランスの作曲家、モーリス・ラヴェルがバレエ曲として作曲した。一定のリズムを保ちながら、2種類のメロディーが繰り返されていく。この句は、ボレロの生演奏を聴いた日の夜、いつまでも頭の中でメロディーが鳴り止まず、心が覚醒していく感覚を端的に詠んだ。(潔)

艸句会報:すみだ(令和元年10月23日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題 そぞろ寒

高点3句
秋出水詩歌も虚し千曲川      高橋 郁子
母いつか子の名を忘れそぞろ寒   工藤 綾子
茅葺や京の美山の木守柿      岡戸 良一

家中の施錠確かめそぞろ寒     長澤 充子
たから箱のどんぐりにある物語   岡崎由美子
秋の虹昭和のおかつぱ白髪に    工藤 綾子
句に夢中気づけば雨やそぞろ寒   大浦 弘子
即位礼の雨の皇居や新松子     高橋 郁子
大橋を消し海峡の霧笛鳴く     岡戸 良一
湯屋の戸に「わ」の札下がる冬隣  貝塚 光子
紅葉狩り歩き疲れて寄る足湯    桑原さかえ
見守られ歩む百歳金木犀      福岡 弘子

(清記順)

一口鑑賞秋出水詩歌も虚し千曲川」〜郁子さんの句。先の台風19号は関東甲信や東北に甚大な被害をもたらした。50を超える河川が氾濫した中で、長野県を流れる千曲川も例外ではなかった。作者にとっては思い出のある川なのだろう。この句は中七の「詩歌も虚し」に率直な気持ちが表れている。島崎藤村の「千曲川のスケッチ」をはじめ多くの文学作品に登場するし、五木ひろしの「千曲川」では旅情が歌い込まれている。ところで、芭蕉は『更科紀行』で木曽路から信州に入ったが、なぜか千曲川の句を一句も詠んでいないという。「即位礼の雨の皇居や新松子」〜これも郁子さんの句。天皇陛下の即位の礼を題材に詠んだ、いわゆる時事俳句だが、「雨の皇居」と端的に言い止めたところがうまいと思う。(潔)

艸句会報:若草(令和元年10月14日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「榠樝の実」、席題「体」

高点5句
その中に兜太に似たる榠樝の実   安住 正子
台風裡カレーに落とす生卵     山本  潔
閂のすとんと秋になりにけり    加藤 弥子
不屈なる子規の横顔榠樝の実    市原 久義
消費税八やら十やら秋刀魚焼く   針谷 栄子

児がくれし青き蜜柑に掌の温み   加藤 弥子
長き夜の甘みの欲しき体かな    山本  潔
林道の風のことづて秋の声     岡戸 良一
ごつごつと光の触るる榠樝の実   坪井 信子
紅白のされど寂しき彼岸花     市原 久義
体育の日団地の底の運動場     安住 正子
父母の守りし土蔵榠樝の実     松本ゆうき
秋高し部活帰りのコロッケパン   沢渡  梢
穭田の辻に双体道祖神       新井 洋子
悩むとき悩まざるとき草の花    石田 政江
師の在せし初学の道の青くわりん  針谷 栄子

(清記順)

一口鑑賞その中に兜太に似たる榠樝の実」〜正子さんの句。昨年2月に他界した金子兜太の遺句集『百年』(朔出版)がこのほど刊行された。その記念イベントが兜太の故郷、秩父でも行われ、作者も参加してきた。この句は、兜太が好きだったという榠樝の木を見てきた実感から発想した。榠樝の実のごつごつして肉厚の印象を「兜太に似たる」と見て取った。<友ら亡し青く大きく榠樝の実><老年のわれに賑やか花梨の実>はいずれも『百年』から引いた。「ごつごつと光の触るる榠樝の実」〜信子さんの句。以前、東京・国分寺市の殿ヶ谷戸庭園で見た榠樝を思い出して詠んだという。もはやこの木はないそうだが、見事に写生句として成立している。記憶にしっかり残るまで榠樝の実をよく見たからだろう。中七の「光」に詩情が溢れている。写生の大切さを教えてくれる一句。(潔)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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